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2022-03-16 00:00
(連載2)ウクライナ危機で露呈する戦後安保の致命的な欠陥
倉西 雅子
政治学者
しかも、先述した核拡散防止条約の成立は(今日では、並行的に核兵器禁止条約も存在している…)、唯一とも言える中小国の大国に対する軍事的対抗手段を禁じ手としてしまいました。核の抑止力を以って超大国の軍事的野心を牽制することは、国際法違反の行為とされたのです。
かくして、中小国の多くは、多国間、あるいは、二国間の軍事同盟条約を締結し、超大国の核の傘に入ることによって自国の安全を確保することとなるのですが、それでは、’核の傘’のない国の運命はどうなるのでしょうか。ウクライナの場合、ソ連邦崩壊後の1994年に、ベラルーシ及びカザフスタンと共にアメリカ、ロシア、イギリスと「ブダペスト覚書」を交わし、自国領域内に備蓄されていた核兵器はロシアに引き渡しています。この際、三国は、核放棄、即ち、核拡散防止条約への加盟の見返りとして、ウクライナの独立・主権、国境線の尊重を約するのみならず、同国に対する武力行使等のみならず核兵器の使用の自粛でも合意しています。
同覚書に照らしますと、ロシアのウクライナ侵攻は明らかに国際協定違反となるのですが、ここで一つの疑問が湧いてきます。それは、それを維持できたのかという話は脇に置くとして、仮にウクライナが核兵器の放棄に応じていなかったならば、ロシアは、同国に対してかくも攻撃的であったのだろうか、というものです。結局、ロシアの協定遵守を信じて核兵器を放棄したウクライナは、ロシアに騙されたに等しいということになりましょう。安保理常任理事国による軍事同盟かつ核なき国に対する攻撃は、ウクライナに救いのない状態をもたらしているのです。
国連の設立も核兵器廃絶もその目的は平和にあるのでしょうが、現実には、ロシアや中国のように合意があっても一方的に反故にし、かつ、国際法を踏みにじる国家も存在しています。そして、理想の希求がむしろ平和に対する脅威をもたらすという忌まわしき現実は、今日、戦後の安全保障体制の抜本的な見直しという問題を、全人類に対して提起しているように思えるのです。(おわり)
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