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2022-03-11 00:00
「核共有」を言い出した安倍元首相の無責任
伊藤 洋
山梨大学名誉教授
因幡の白兎は、隠岐の島に渡りたいが泳ぎは不得手、そこで一計を案じ、海中をうろうろしている「ワニ(鮫サメ)」らを利用して海を渡ろうと考えた。「お前たちの一族の数とわしらの数のどちらが多いか勘定してあげよう」と誘うと、算数の苦手なワニたちは言われた通り集まってきたので、兎が渡りたい気多崎(けたのさき)まで並ばせて、1頭、2頭と数えていった。島を直前にしてしめたと思った兎、「お前たちは騙されたのだ!」と叫んでしまった。これが少々早すぎて無残にも皮を剥かれて赤裸にされてしまった。
安倍晋三元首相は27日のフジテレビ番組で、北大西洋条約機構(NATO)加盟国の一部が採用している、米国の核兵器を自国領土内に配備して共同運用する「核共有」政策について日本でも議論すべきだとの考えを示し、ロシアのウクライナ侵攻を踏まえ「世界の安全がどのように守られているのか。現実の議論をタブー視してはならない」と述べた。こういう考えが急に昨日今日に突然脳裏に湧いて出てきたのならいざ知らず、以前から考えていたのならなぜ今まで黙っていたのか。在任中にこんなことを語れば国民から強烈な反発を受け、政権継続は不可能となっていたことであろう。典型的インモラルで「因幡の白兎」の行状だ。
チャンネルが「8」のフジテレビでの発言というから、それなりに番組制作者との間にア・ウンの呼吸あっての発言と相成ったもので、決して単純な失言ではなかろう。「核廃絶」は、近頃大阪くんだりで理解不能な主張をする者たちを除けば、政治信条・支持政党の違いを越えて唯一この国の民がともに悲願とし、戦後80年これを国是と思ってきたはず。安倍元首相の発言を何と聞けばよいのか。
非核三原則「作らず・持たず・持ち込ませず」は氏の叔父佐藤栄作元首相に起源をもつ。また、ロシアが核攻撃をチラつかせるこの異常事態にあって現首相が被爆地広島選出の岸田文雄氏であったのは意味深いことだ。彼にとって、広島にとってレジティマシーとも言うべき政策であり「核廃絶」は岸田内閣の基盤であろう。また、これが外交問題であることから、次期衆院選で真っ向勝負が予想される外務大臣林芳正氏に対する安倍氏の毒薬発言でもあろうか。いずれにせよ元首相として無責任の最たる物言いであり、筆者はまさに因幡の白兎の言を聞いた「ワニ」の心持ちである。そして、大国主命に今度ばかりは「あわれがり」などしないでもらいたいと心から強く強く思ったのである。
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