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2022-02-22 00:00
(連載1)朝日新聞OBの安倍政権検証本を読んで
中村 仁
元全国紙記者
朝日新聞の元主筆が主宰するシンクタンクが「検証安倍政権/保守とリアリズムの政治」と題する本(文春新書)を出版しま。400㌻の分厚い検証本で、安倍氏をはじめ54人の政治家、官僚にヒアリングをしたそうです。元主筆の船橋洋一氏らはこれまで福島原発事故、民主党政権の失敗、新型コロナ対策など日本の国家的な課題、公共政策について民間臨調(民間による行政調査会)の手法で取り組み、厳しい提言を重ねてきました。それが一転、安倍政権については高い評価を下しているとの印象を受けます。
中北一橋大教授を座長に、8人の大学教授を執筆者にそろえ、アベノミクス、選挙・世論対策、官邸主導、外交、通商問題などをテーマにしています。船橋氏は検証の統括者として序文と後書きを書いています。中北座長は「本書を貫く問いは、安倍政権が異例の長期安定政権(7年8か月)になったのはなぜかである」と。政策結果の検証ではなく、安倍氏はどのような手法で長期政権を維持したかに焦点を当てたというのです。長期政権を可能にした政治手法、政権運営、官邸主導、選挙対策、与党・国会対策に的を絞ったといいたいのでしょう。それが本書の特徴であるとともに、それが弱点でもあります。長期政権が遂行した政治による政策結果の検証が不十分で、政権の狙いの説明に軸足を置いているからです。
船橋氏は冒頭の「はじめに」で、「安部政権はこれからの統治のある種の規範的な存在となるだろう」と、称賛に近い表現を使いました。「規範的な存在となる」と聞いて、安倍氏らは喜んでいるに違いない。反安倍政権が朝日新聞の立場だったとすれば、船橋氏はその真逆の立場をとりました。日本では、1年程度の短命政権ばかりが続き、本来の政治課題に取り組むことより、政局運営の綱渡りが最大のテーマになっていました。その意味では長期政権型の政治が「規範的な存在」になることは必要です。そういうのならば、政策結果の評価も経て「規範的な存在」というべきです。
中北座長は「成長重視のアベノミクスを基軸としながらも、成長と分配の好循環を目指す政策に舵を切り、野党のお株を奪った」と、表現しました。安倍政権はそういう説明をしてきました。アベノミクスが結果を伴っていれば、岸田首相が「成長と分配」「新しい資本主義」と唱えだすはずがない。コロナ危機の影響もあり、経済成長率ひとつとっても、改善の兆しは見えていません。「アベノミクス/首相に支配された財務省と日銀」(第1章)では、上川阪大教授が「2%の物価目標が実現されず、金融緩和の副作用が顕在化」と。当然の指摘です。問題はその後に続く部分です。「異次元緩和を支えた雨宮副総裁らは、異次元緩和を実施し、その限界を明らかにすることで、金融政策の主導権をリフレ派から取り戻した。政界やメディアによる故なき批判から日銀を解放した」と。(つづく)
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