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2022-02-17 00:00
(連載2)他人事ではないウクライナ情勢
大井 幸子
国際金融アナリスト
ウクライナ情勢について特に米国メディアがロシア侵攻を煽るような報道をしていますが、私は、欧州とロシアはパイプラインをめぐる経済安全保障上の問題は外交で解決する方向に向かうと見ています。その場合、ロシアは自ら軍事衝突の矢面に立つリスクを避けつつ、米国の目が西方から離れるよう次のカードを切る可能性があります。北朝鮮に促して太平洋に向けて大陸間弾道ミサイルを発射するのです。ロシアは兵器供給や開発で北朝鮮を支援しており、北朝鮮に対して持つ影響力は大きい。1月に北朝鮮はなんどもミサイルを発射し、日本海に落下していますが、その軌道は北米西海岸に向けており、ウクライナでロシアが望む結果が得られない流れになれば、北京五輪後、東アジアのテンションが高まっていくのではないでしょうか。
朝鮮半島では、第2次世界大戦後の米ソ冷戦で南北に分断された韓国と北朝鮮とが睨み合う状況が続いてきました。かつての冷戦時代に分断された東西ドイツや南北ベトナムは、ソ連崩壊後に統一に向かいました。朝鮮半島だけが唯一、冷戦終結後も分断されたままになっているのです。北朝鮮は中国とロシアの支援を得て、韓国と対峙し、韓国は朝鮮半島の先端で米軍と共産主義勢力の緩衝国家として機能してきました。中国は内陸から海洋へとその勢力を張り出し太平洋へ出ようとしていますがその勢力圏に蓋をするように位置するのが日本列島です。日本が米国勢力の最大の防波堤であると言われる所以です。中国は、日本から伸びる第1列島線まで勢力を拡大しています。仮に、3月の韓国の大統領選挙を契機に朝鮮半島が北朝鮮・中国主導で動き出すことになれば、日本に地政学的利益をもたらしてきた韓国の緩衝地帯としての役割が損なわれ、日本が米国側の緩衝国家として最前線で取り残されることになります。これは日本の安全保障上の一大事です。
プーチン大統領は冷酷冷徹な国家理性の持ち主です。米国の経済制裁を止めさせ、ロシア領土を守るために、彼は中国や北朝鮮を利用するでしょう。ロシアは米中が対立し、互いに消耗し合うことを望みます。そういう意味で、今後重要になってくるのが北朝鮮の動きです。ウクライナ危機でどのような交渉が行われるのか。その結果次第ではありますが、流動的になりつつある米露関係、そして既存の戦後秩序は維持が困難になっていくと見ています。まず、朝鮮半島では現在の南北分断の体制が近い将来に限界を迎えるでしょう。そのメルトダウンによって第二次大戦で固定化した大国の国際的地位が動揺し次の世界秩序に向かいます。
その矢面に立つのが、太平洋西側にぽっかり浮かぶ日本列島です。朝鮮戦争が終結し、朝鮮半島が何らかの形で統一されれば、日米同盟の意義が問われることになります。次の世界秩序構築に向けて日米同盟が仕切り直しになる場合には、大国間では、日本の西側緩衝国家としてのあり方も再検討され、その役割の変更を迫られるような交渉が進むでしょう。まさにヤルタ会談の時点まで歴史が振り出しに戻るのです。第二次大戦もその前夜までは、誰もがそのリスクを軽く見積もり、巨大な変化の可能性を重視しませんでした。ウクライナと同様にロシアの隣国である日本も冷酷な世界の流れの中で緩衝国家として取り残されようとしていますが、それにもかかわらず、日本は対岸の火事のようです。ウクライナと通底するリスクに無関心で、独立国家としての専守防衛の戦略も定かではない日本。どこへ漂流していくのでしょうか。(おわり)
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