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2022-02-16 00:00
(連載1)他人事ではないウクライナ情勢
大井 幸子
国際金融アナリスト
欧米NATO軍とロシアがウクライナをめぐり情勢が緊迫しています。何か遠い国の出来事のように報じられていますが、実は廻りまわって日本の安全保障にも大きく関わる重要な事由です。
【地図】から確認しますと、ロシアから欧州へ天然ガスを輸出する主要なパイプラインが通っています。ウクライナ経由(赤線)の他にも、バルト海底経由でドイツに向かうノルドストリーム(青線)、ベラルーシとポーランド経由でドイツに向かうヤマルヨーロッパ(黄線)、そしてジョージア(アゼルバイジャン、グルジア)経由してトルコを通り南欧州に向かうパイプライン(緑線)があります。(地図の点線は建設中のパイプラインを示しています。)ロシアとNATOに挟まれたこの地域は地政学上、常に列強の緩衝地帯(バッファー)であり、歴史上、少数民族の分離独立運動や紛争が続いてきました。ロシアはソビエト連邦時代の周辺国が西側NATOに組み入れられ、ロシア領土内に敵対勢力の武器や兵器が入り込むことを防ごうとしています。しかも、ガスパイプラインが敵側の手に落ちればエネルギー資源と大きな利権を失います。
今世紀に入り、2008年8月には南オセチアをめぐるグルジアとロシアの紛争、そして、2014年2月にはクリミア危機が起こりました。ウクライナは2014-15年にロシアとの戦争で大変な不況と金融危機に見舞われました。ウクライナはリーマン・ショックでも他の周辺国より大きな損害を受けましたが、クリミア危機でも周辺国と比べてかなりのマイナス成長になりました。今回のコロナショックよりもひどく景気が落ちこみ、リーマン・ショックよりも長い期間、不況に苦しみました。
ロシアもまた欧米からの経済制裁を受け、コロナ禍で経済は良くありません。ロシアの株価は昨年10月から3割近くも下落しています。今ウクライナとロシアがリアルな戦争をすれば、双方とも長期戦に耐えるだけの経済的体力はありません。そして、ドイツや欧州にとっても、戦争によって厳冬下でガス供給が止まれば、経済的打撃も大きく、国民が凍死するリスクすらあります。よって、現場の当事者は誰もウクライナとロシアの戦争を望んでいないのがホンネです。(つづく)
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