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2022-02-12 00:00
NHK視点論点「2020年の中国政治」をみて考えたこと
松本 修
国際問題評論家(元防衛省情報本部分析官)
巷間では「1月は行き、2月は逃げて3月は去る」というらしいが、この3連休を過ぎると2月も半月が過ぎたことになり時間の経つのは全く速い。そんな中で小生は2月2日、川島真東大教授によるNHK視点論点「2022年の中国政治」解説を視聴した。「昨年の2021年は、中国共産党の成立100年でした」と切り出した川島教授は、習近平総書記が貧困問題解決による全面的な小康社会の実現や、毛沢東・鄧小平以来となる歴史決議の発表とともに、コロナ拡大の防止の中でマスク・ワクチン外交などを通じて国際的なプレゼンスを高めたことを喧伝しているのは「2022年秋の第20回党大会に向けての布石であった」と主張しました。そして、川島教授は「今年の中国では、北京オリンピックを初め様々な問題が、この秋の党大会の人事に関連づけられて評価されることになる」とも指摘しています。1987年の第13回党大会以来、2017年の第19回党大会まで通算7回の党大会を観察・分析してきた小生にとっても、確かに第20回党大会の人事を分析・予想することは知的好奇心を大いに刺激するものとなります。しかしながら、中国政治の人事予想ほど難しい作業はないとも痛感してます。ましてトップの習近平総書記が「68歳定年制」とされる内規を破棄して異例の三期目15年間へと任期延長をはかるか、あるいはかつての毛沢東時代のような「党主席」制度を復活させるとしたら、従来の人事予想の前提は完全に崩れてしまいます。他方、党大会における焦点は人事と同時に、今後の中国政治の方向性たる政策方針の表明である。この点、年明けから注目される報道が表れたので、以下細部紹介したい。
1月18日の新華社報道によると同日、党中央の許可を経て国家発展改革委員会に「習近平経済思想研究センター」が創立されたという。しかし、国家発展改革員会党組織が、同研究センター開設を目指して開いた理事会は昨年7月5日であったことも併せて公表されており、創立まで7か月もの期間を要したことを示唆している。この点、小生は昨年9月22日付の拙稿で、いわゆる「習近平思想」が「毛沢東思想や鄧小平理論とは異なり、論理的一貫性がなく『アイデアの寄せ集めに過ぎない』ことから、その解釈と普及を担う必要性に基づき」党・政府機構や地方政府に「研究センター」(研究中心)18個が設立されていることを指摘していた。その中に国家発展改革委員会は入っていたが、ここまで正式な創立が遅れたのは何故だろうか。「習近平の名を冠する」のだから慎重な準備を行ったとも言えるが、習近平の側近とされる何立峰がトップを務める国家発展改革委員会が、言わば「殿」(しんがり 序列などの最後)扱いとなるのは異例と言えよう。
次に、2月7日の旧正月明けから党機関紙「人民日報」紙上において、11日まで5回連載された「重大な理論と実践問題」である。これらは、昨年12月に開催された中央経済工作会議において強調された「新発展段階に入り、我が国の内外環境の発展には深刻な変化が起こり、多くの新しい重大な理論と実践問題に直面しており、正確な認識と把握が必要となっている」五大問題である。それらは昨年来問題になっている「共同富裕」の戦略目標と実践路線、本年で正式導入30年となる「社会主義市場経済」における資本の特性と行動原理、「農産物・エネルギー・鉱物資源など初級製品」の供給保障、いわゆる「ブラックスワン」や「グレイライノー」の発生など重大なリスクの防止と対処、カーボンニュートラルなど脱炭素問題であるが、いずれも「三新」(新発展段階、新発展理念、新発展構造)理論に関わる重大な問題である。しかし、習近平政権は、「三新」理論をはじめとして、これら重大問題への統一的な解釈も抜本的な対策も打ち出していないのだ。そのような中、党・政府・軍に対し「正確な認識と把握が必要」と要求しても、各界は右往左往するだけであろう。今秋まで時間は限られており、予定されている第20回党大会で習近平が、いかなる内容の政治報告を行うか注目される。
最後に本年9月、日中両国は国交正常化50周年を迎えることになるが、昨年12月11日付のソ連・ロシア問題の大家・袴田茂樹氏の「百花斉放」論稿における指摘を引用したい:「・・このようなナイーブな対露政策を取り続けた・・最大の問題は、日本の官邸指導部がロシア指導部の発想法やメンタリティ、彼らのロジックをリアルに理解せず、官邸周辺の一部の誤った或いは意図的な情報を頼りに、全く根拠のない期待と楽天的幻想に基づいて対露政策を推進したことにある。」小生は、この中の「対露政策」を「対中政策」、「ロシア指導部」を「中国指導部」に置き換えれば、この半世紀における日本の対中政策にも当てはまると考えていたところ、奇しくも週明け2月14日は、2013年に亡くなった恩師・中嶋嶺雄教授の10周忌にあたり、中嶋先生の対中国・ロシア発言に思いをはせた次第である、合掌。
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