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2022-01-19 00:00
(連載1)カザフスタン危機とロシアの思惑
大井 幸子
国際金融アナリスト
年明け、カザフスタンの最大都市アルマトイで大規模な反政府デモがあり、暴動鎮圧にロシア軍が介入し、カザフ情勢は一気に不安定化しました。カザフスタンは実は日本にも縁が深いのです。1991年にソ連から独立し、日本の開発経済の専門家やJICAがその後の経済成長に地道な支援をしてきました。ナザルバエフ大学の学長は元世界銀行の勝茂夫氏が務められています。エシムベコフ駐日大使は1993年から横浜国立大学に留学された知日派で、1ヶ月前の12月16日には外人記者クラブで講演されたばかりです。それが、年明け情勢が一転し、私も本当に驚きました。
カザフ情勢について簡単にまとめます。ソ連共産党内の有力者でもあったナザルバエフ氏が独立後も長期にわたり大統領を務め、2019年にトカエフ氏が2代目大統領に就任しました。ナザルバエフ大統領の権威主義的政権下で、大きな力を持ったのはマシモフ氏(元ソ連KGBで中国武漢、北京に留学した親中派)で、2007-12年に首相、2016年に秘密警察のトップ、国家保安委員会議長に就任しました。マシモフ元首相は今回のロシア介入で、国家反逆罪の疑いで拘束されました。また、ナザルバエフ元大統領は、退任後も国家安全保障会議の終身議長の地位を保持していましたが、1月5日には更迭されました。
ナザルバエフ長期政権下でカザフ政治は、賄賂と腐敗が横行するクレプトクラシー(泥棒政治)と称されてきました。こうした独裁政治への不満が蓄積していたところに、液化石油ガス(LPG)の価格が高騰し、国民の怒りに火がついたと報じられています。確かに、天然ガスや石油、石炭など資源価格は値上がりし、日用品など物価が上昇してきました。しかし、事態の深刻さは、大規模なデモが激しい暴動に発展していく過程で、そこに組織だった「外国勢力」が入り込んでいたという点です。
トカエフ大統領は「非常事態」を宣言し、空港、放送局、インターネット、銀行などが遮断され、1月6日に大統領は暴徒鎮圧のために、旧ソ連の軍事同盟「集団安全保障条約機構CSTO」に支援を要請しました。ロシア精鋭部隊が鎮圧に入り、まさにクーデターの戒厳令の様相となりました。一時の混乱はすでに収束し、ロシア軍は撤退しつつあるものの、死者225名を出し、今日19日にはかつて強勢を誇ったナザルバエフ前大統領が完全引退を言明するなど、事態は流動的です。(つづく)
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