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2022-01-14 00:00
(連載1)現代に緊急事態条項は必要か
倉西 雅子
政治学者
昨年半ば6月11日における改正国民投票法の成立もあって、憲法改正を身近な問題として感じる国民が増えてきているように思えます。とりわけ、新型コロナウイルス感染症のパンデミック化に際し、憲法において非常事態宣言条項を有する諸国にあって、ロックダウンといった強硬策をとった国が少なくなくなかったことから、日本国内でも、憲法改正の論点として緊急事態条項の新設が取沙汰されるようにもなりました。
緊急事態宣言や非常事態宣言に法的な根拠を与える緊急事態条項、あるいは、非常事条項とは、主として戦時を想定して憲法において設けられてきたものです。戦争という非常時にあっては、国家の持てる資源を優先的に戦争に投じなくてはならず、特に防衛戦争では、全国民の協力なくしては敗戦の憂き目を見ます。今日にあっても、武力や威嚇、あるいは、詐術で屈服させ独立性を奪い、少数民族に対して残酷な民族浄化を行う中国のような国も存在していますので、古今東西を問わず、何れの国にあっても、防衛戦争での敗北は何としても避けなければならない事態です。
こうした国家の存亡、並びに、国民全員の死活問題となる局面では、しばしば国家体制を変える必要に迫られるケースが少なくありません。国民を含む国家全体を組織化し、迅速な上意下達が可能となる軍隊組織に近い指揮命令系統を敷く方が、戦争に勝利する、あるいは、防衛に成功する確率が上がるからです。このため、戦時にあっては、平時における国家体制を有事に適した体制へとシフトさせ、それに伴い、国民の基本的な自由や権利に対して一定の制約を課すことも珍しくはなかったのです。有事の体制とは、いわば‘全体主義体制’と言っても過言ではないのです。
例えば、共和制ローマの時代では、平時にあっては相互チェック(慎重な決定…)や幅広い意見集約などの観点から二人体制としてきたコンスル職(執政官)を、有事あっては一人の独裁官(ディクタトール)に委ねる制度がありました。先の大戦でも、枢軸国陣営、連合国陣営の違いを問わず、何れの国でも挙国一致体制が敷かれ、徴兵に加え、国家総動員法の制定により全国民は戦争への協力が義務化されています。そして、国家目的に沿った資源の戦略的な配分を実現するために、経済も厳しく統制されたのです。文字として記録に残らずとも、平時と有事とでは異なる国家体制を採る知恵、あるいは、必要悪の是認は、人類普遍と言えるのかもしれません(因みに、帝政ローマは、共和政時代の独裁官制度を平時に恒久化したスタイルとも言える…)。この側面からしますと、2010年に「国防動員法」を制定した中国の習近平体制は、戦時体制として理解されましょう。(つづく)
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