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2007-08-22 00:00
連載投稿(1) 『現代中国の経済改革』を読む
池尾愛子
早稲田大学教授
中国人経済学者グループによる「転移する中国経済」についての重要な書物があり、その日本語版が出版されているので紹介しておこう。呉敬レン(Wu Jing Lian)教授の『現代中国の経済改革』(青木昌彦監訳、日野正子訳、NTT出版、iv+433頁、2007年3月刊)で、教授の中国国内の大学院レベルの講義と彼の元学生・研究パートナーたちの執筆協力から生まれた書物である。呉教授は内外の研究者と交流する機会をもちながら、国務院経済発展研究センターで社会主義経済改革の理論と経済政策の専門家として実際面でも活躍し、そしてパリに本部をおく国際経済協会(International Economic Association、IEA)の執行委員も務めている。
同書は1998年に上海で最初に出版され、中国語繁体字版と英語版が出版されている。日本語版は2004年改訂版の全訳である。同書は、中国の改革戦略の変遷を縦糸に、20世紀以降に制度をめぐって主に西側で展開した経済理論研究の成果を横糸にする実践的内容になっている。4部構成で、「総論」、「部門別分析」、「マクロ経済と社会階層の問題」、「簡単な結論」の各部からなる。第4部「簡単な結論」の第12章「結び」では、中国の研究者たちが改革の過程から多くのことを学んできたと表明されている。
第1部「総論」は2つの章からなる。第1章「改革問題の提起」では、ハンガリーの経済学者J・コルナイ(IEA前会長)が社会主義の問題点を浮き彫りにした「柔らかい予算制約」の概念を参照しながら、旧社会主義国の市場経済への転移方式が総括される。第2章では「中国の改革戦略の変遷」が、1958-78年の行政的分権改革、1979-93年の増分改革、1994年から現在にかけての市場経済制度の全面的確立のために努力する時期の3段階に分けて鳥瞰される。
第2部は「部門別分析」である。第3章「農村改革」では、工業化がもたらす経済発展のなかで、食を支える農業も大きな変貌を遂げることが意識されている。日本では、大川一司の研究や国際共同研究プロジェクトによって明らかにされてきた成果と通じるものがある。中国は小農経営(就業者の確保)を軸としようとしてきたのであるが、現在、7億人をかかえる中国農業は、農業の停滞、農民の貧困、農村の疲弊という「3農問題」と闘っている。(つづく)
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