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2021-12-03 00:00
(連載1)フランス大統領候補ゼムール氏とは
倉西 雅子
政治学者
フランスでは、目下、次期大統領の座をめぐる選挙戦が始まっております。前回の選挙にあって颯爽と政界に登場したマクロン大統領の人気は、その強引な政策手法からか陰りが見られ、新人の当選も予測される状況にあります。そして、同選挙戦において特に注目されているのが、反移民政策を掲げるがゆえに極右候補とされているエリック・ゼムール氏です。移民反対を訴えるぐらいですから、誰もがゼムール氏は生粋のフランス人であると考えることでしょう。ところが、同氏は、ユダヤ系である上に、両親の出身地は旧仏領のアルジェリアであるというのです。つまり、自身も移民2世でありながら、反移民の急先鋒という奇妙な立場にあるのです。
そして、同氏が敵視しているのはイスラム教徒の移民ですので、ユダヤ人の立場からの反イスラムということになりましょう。戦後のイスラエルの建国以来、ユダヤ人とアラブ人(イスラム教徒)との間の対立関係は中東戦争を引き起こす程に激化してきましたので、ゼムール氏の’イスラム嫌い’もこの文脈から理解されるのですが、フランス革命がもたらした普遍主義の手前、表立っては反移民を口にできないフランス人の本音を代弁してか、ルペン氏を越える思いのほか高い支持率を集めているというのです。人々の心の内にある移民の増加に対する危機感、すなわち、本音を代弁している点において、同氏が’フランスのトランプ’とも称されるのも頷けます。
その一方で、ゼムール氏の言動は、ユダヤの人々の複雑な立場をも表しているように思えます。19世紀にあってドイツロマン主義を代表する詩人であったハインリッヒ・ハイネもまたユダヤ人でした(「ローレライ」を作詞)。ユダヤ人の中には、自らの真のアイデンティティーが翳むほどに熱烈なナショナリストとなる、あるいは、ナショナリストを装う人も少なくないのです。それでは、彼らがナショナリスト、あるいは、愛国者として人々の前に現れる動機はどこにあるのでしょうか。
もちろん、ゼムール氏は、フランスという国をこよなく愛する真の愛国者であるのかもしれません。しかしながら、その一方で、同氏がユダヤ人である点を考慮しますと、過激な反イスラム主義はフランスに対する愛国心ばかりではない可能性もなくはありません。(つづく)
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