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2021-11-25 00:00
(連載2)尿素水問題の波紋
真田 幸光
大学教員
さて、最後に韓国に対して、今般、尿素水の輸出規制を実施した中国本土の様子を確認したいと思います。先ず、中国本土の輸出規制措置による韓国の車両用尿素水不足問題に関して、中国本土メディアは韓国の報道を積極的に引用して報じるなど、事態の推移に深い関心を示しています。例えば、官営「中国青年網」は、「車両用尿素は軽油車の排気ガスから環境の負担を減らすものにするのに必須である。韓国メディアは、“石炭価格上昇と電力難で、中国本土が石炭から抽出する尿素の輸出統制を強化し、主に中国本土からの輸入に依存する車両用尿素が不足し物流に支障をきたしている”と伝えている。」と報じ、また、これに先立ち、中国本土政府・海関総署(関税当局に当たる)は本年10月11日、これまで別途の検疫・検査手続きなしに輸出が可能だった尿素・カリウム肥料・リン酸肥料など29の肥料関連品目に対する輸出規制を、4日後の15日から実施すると発表しました。
ここで、一点だけ留意しておきたいことは、「中国本土のリン酸の輸出規制は日本や世界全体の半導体生産に悪影響を与える可能性がある。」という点であります。これは、今回の尿素水と同じように、韓国のみならず、日本の産業界にも悪影響を与える危険性があると認識しておきたいと思います。さて、話を尿素水に再び戻します。上述した中国本土の大規模な輸出規制によって、中国本土から尿素を輸出する為には、中国本土の国家出入国検査検疫局から検査・検疫報告書を受けなければ通関できないようになっているのが現状であります。更に、中国本土のインターネットメディアは、「中国本土の尿素輸出制限で車両用尿素不足問題に直面した韓国政府は、数日間対応策作りに苦心しているが、現在としては根本的な解決策を見出せずにいる。尿素不足問題が広がり、卸・小売など流通業をはじめ建設・鉄鋼・自動車など製造業分野まで影響を受けるとの見通しも出ている。」と伝えました。
一方、中国本土の尿素輸出制限措置が、「韓国締め付け」の為という意図的なものであるという一部の指摘に対する反論も出ており、例えば官営「環球時報」は、シン海明・駐韓中国大使の言葉を引用して、「中国本土の肥料に関連する輸出監督措置は、特定国家に向けたものではなく、国内市場を安定的に管理する為のものである。韓国の尿素水不足問題に関して中国本土側も問題解決の為に努力する。」と報道しています。但し、私には、「中国本土には、自国産業保護だけではなく、他国に中国本土の依存度の高さを知らしめる意図がある。」と見ており、韓国のみならず、多くの国々を意識した政策遂行の意図もあると見ている点、付記させてください。そしてこうした中国本土メディアの報道の一方で、中国本土のネットユーザーのやり取りを見ていると、本件に対する関心は高まっている様子であり、本件関連記事がポータルサイトの百度(Baidu)ニュースの検索順位3位にまで浮上する状況にもなったようであります。
そして、具体的にネットユーザーのコメントには、「先進国の韓国は尿素水も作れないのか?」「韓国に尿素水を供給する見返りに、ファーウェイ(華為)に半導体を供給してくれと言おう!!」などと書き込みが見られています。更に、興味深いのは、ある中国人ネットユーザーが、「敵が1人増えるより友人が1人増えた方がいい。いま韓国を一度助けてあげれば、相互信頼をもとに北東アジアの安定と国際情勢に大きく役立つだろう。」と主張すると、これに対して即座に別の中国人ネットユーザーが、「幻想を持つな。アジア太平洋地域で韓米日は同盟国だ!!」と反論していました。こうして尿素水問題の波紋は更に広がったままであるようです。(おわり)
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