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2021-11-17 00:00
(連載1)欧米に逆行する経済政策を警告しない社説に失望
中村 仁
元全国紙記者
米国の中央銀行(FRB)が量的金融緩和の縮小を開始します。新型コロナ禍による経済危機が収まる一方、物価上昇が目立ってきたからです。カナダは量的緩和の終了を決め、英国も24年度までに、コロナ対策で赤字が膨らんだ財政の再建をするそうです。 主要国はコロナ危機で傷んだ金融財政を正常化する方向に向かっていきます。岸田政権は「新しい資本主義実現会議」を設け、「成長と分配の好循環」を目指す。その前提として、日本の金融財政政策の方向をどう転換させるかが最重要の問題なのに、危機感が全くありません。今が金融財政政策の国際的、歴史的な転換点なのです。こういう基本的な国家路線のあり方が問われる時ほど、新聞の社説の価値が問われます。主要紙を一読してみると、失望するばかりです。
朝日新聞は「コロナ禍の下でも危機対応から安定成長に、いかに注意深く軟着陸するか」「米当局は世界経済への波及効果にも十分目配りしてほしい」と、主張しました。日本の社説が指摘しなくても、米FRBは当然「軟着陸」を考え、「目配り」もしているのです。日本では、「物価上昇2%目標をまだ達成していない」として、日銀は現行政策を維持します。それについて、朝日新聞は「国際的な市況の上昇(資源高)や円安を通じ、輸入物価が上がってきた。企業収益や家計負担に悪影響を与えていないか注視が必要だ」と。さらに「景気回復の道筋を確かにするためにも、先行きに予断を持つことは許されない」と。「注視が必要」「予断を持つな」も、言わずもがなの指摘です。読む価値がない社説の典型的な例です。
新聞週間の世論調査(読売10/14日)で「新聞に期待していることは何ですか」の問いに、「情報の正確な伝達73%」「事実を分かりやすく伝達61%」に対し、「新聞社の主張の提示7%」と、最下位です。その意味は「この程度の社説なら要らない」が読者の実感なのです。真偽がごちゃ混ぜ、党派色の強い情報が氾濫するネット社会だからこそ、基本的な判断が問われるのです。社説に求められる社会的役割が高まっているはずなのに、それに応えていない。
経済専門紙の日経新聞はどうか。「金融政策のかじ取り難しさを増している。国内外に十分目配りした慎重な政策運営を期待したい」と。そんなことを言われなくても、米FRBは分かっている。読む価値が乏しい。日経は「経済・物価の動向を予断なく見極め、市場との粘り強く対話を続けてほしい」とも。この「市場との対話の必要性」は、メディアの常識的用語になっています。「そう言っておけば、何かまともな主張をした」かのような錯覚に陥っているのです。「政策当局との対話」に期待するのは間違いです。そんなものに頼るから市場が政策当局を牽制できない。政策当局の説明には、相当なウソが含まれている。その典型が黒田日銀総裁の「2年、2%物価上昇、通貨供給量2倍」の「2年、2%、2倍」のウソを今も引っ込めていません。政策当局は異常な金融緩和、財政拡大で市場を左右してきた結果、市場は政策当局の挙動、言動に引きずられ、自らの判断力を失ってきました。経済専門紙なら「市場は自らの判断力を取り戻せ」というべきです。(つづく)
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