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2021-11-15 00:00
(連載1)FRBの量的緩和縮小と日銀の現状維持
岡本 裕明
海外事業経営者
アメリカの中央銀行に当たるFRBは11月2-3日に開いた定例会合で金融の量的緩和縮小を発表しました。FOMCの定例会合の結果発表は北米太平洋時間で通常は午前11時。株式市場はあとまだ2時間開いています。毎度のことですが、トレーダーはこの瞬間にすべてを集中させ、その発表の内容でどどっとマーケットの指標が動きます。しかし、通常、パウエル議長の記者会見がその直後に開かれるため、その内容を読み解き、消化した時、第二弾の動きがあることも多くなっています。分かりやすく言えば日本で大事件の裁判があるとき、判決が読み上げられると記者が判決だけを聞いて傍聴席から飛び出し、外で待ち構える現地レポーターを通じて「無罪です!」とカメラの前で叫び、判決文が判明した後、内容が子細に伝えられるのと同じです。
さて、私も今回の様子を見ていたのですが、11時の発表を受けたコメントを読み、瞬時に「ハトだ!」と心の中で叫びました。つまり弱気トーンです。案の定、発表を受けて株価指数はナスダックを中心にぐいぐい上がり、金の買い戻しもありました。なぜ、ハト派と思ったのか、といえば緩和縮小におっかなびっくりである姿勢が報道の随所にアリアリと見えたからです。事実、雇用はFRBが満足する状態には程遠く、労働市場では完全なるミスマッチが起きています。サプライチェーンも崩れたままでコロナも再び欧州を中心に増加傾向が鮮明になっています。日経に「FRB、金融正常化へ未曽有の難路 緩和縮小に着手」とあります。「正常化」がどういう状態でどれだけ続くことを指しているのか分かりませんが、個人的にはFRBが金融緩和策を介して購入した国債や住宅担保証券ローンの資産は多少増減があっても永久に消えることはない、とみています。
何故か、といえば昨今の景気循環が一般的ななだらかなものではなく、落ち込むとき衝撃的な崩落をする傾向が強いため、中央銀行が大手術、リハビリをする時間がどんどん長くなる傾向にあるのです。しかも現在は利上げをするのが正しいのか判断に悩むところで利上げは「時期尚早」としています。
一方、同日に英国であった中央銀行政策決定会議では数か月以内の利上げを提示しました。カナダもすでに量的緩和を終了しており、来春の利上げが見込まれています。韓国、ニュージーランド、ノルウェーはすでに利上げしています。韓国の場合8月に利上げをし、株式市場は1割強下落、今月に追加利上げを見込んでおり、影響が大きくなりそうです。(つづく)
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