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2021-11-10 00:00
立憲民主党を惨敗させた「共産党アレルギー」
加藤 成一
外交評論家(元弁護士)
今回の総選挙を一言で総括すれば、右派系政党が勝利し、左派系政党が敗北したことである。具体的には、右派系の自由民主党が予想外に善戦し衆議院の絶対安定多数261議席を確保した。また、右派系の日本維新の会が議席を4倍の41議席に増やし大躍進した。これに対して、左派系の立憲民主党が14議席減の惨敗、同じく左派系の日本共産党が2議席減の敗北である。これが今回の総選挙の結果である。
このような、右派系政党勝利、左派系政党敗北の背景については、マスコミ、専門家等により様々な分析がされているが、私見では、まず、自民党善戦の要因として、ワクチン接種の飛躍的拡大により、全国的に新規感染者数が激減したことが大きい。次に、立憲、共産などの左派政党は、ひたすら「分配」のみを強調し、その前提となる「成長戦略」が乏しかった。左派系政党は「アベノミクス」を厳しく批判するが、それに代わる強力な経済成長戦略や、新たな産業政策を提示できなかった。さらに、立憲、共産は、安保法制廃止を主張し米国との集団的自衛権にひたすら反対した一方で、近年の中国の覇権主義的軍拡による尖閣危機や台湾有事など、東アジアの厳しい安全保障環境の下で、国民、領域を守るための集団的自衛権に代わる確固たる安全保障政策を提示できなかった。
立憲は、小選挙区における候補の一本化を目的として、総選挙前の9月30日に、安保法制廃止と立憲主義回復を目指す市民連合を介して、共産との間で20項目の「共通政策」の実現を目的とする限定的な「閣外協力」の合意をした。この合意により、全国で200を超える小選挙区において、立憲を中心とする候補の一本化が実現した。しかし、選挙の結果は前記の通り立憲の惨敗に終わった。立憲は小選挙区では公示前に比べ9議席増やしたが、比例では23議席も減らした。政党名で投票する比例は政党の党勢を反映するバロメーターとされている。上記結果は、立憲が政党として支持されなかったことを意味する。立憲の枝野代表は選挙中盛んに「政権交代」を叫んでいた。共産の志位委員長も同じである。しかし、両者が「政権交代」を叫べば叫ぶほど、国民は不安になったに違いない。なぜなら、もし、政権交代が実現すれば、立憲と共産が協力する「容共政権」が日本で初めて誕生するからである。
筆者はこれを「共産党アレルギー」だと考えている。つまり、共産党に対する国民の恐怖心である。この恐怖心は、根本的には党規約2条で日本共産党が立脚する共産主義イデオロギーである「マルクス・レーニン主義」(「科学的社会主義」)に起因する。「マルクス・レーニン主義」が、日本国憲法と明らかに矛盾することや、自由民主主義のイデオロギーに基づく市民的自由を認めない旧ソ連、中国、北朝鮮などの社会主義国家の実態を見れば、共産主義への国民の恐怖心を否定することはできない。連合が示した日本共産党との「閣外協力」への拒否反応は、一般国民が持つ「共産党アレルギー」を端的に示したものであり、支持母体の機嫌を損ねた立憲が惨敗したのは当然である。立憲は「共産党アレルギー」を起こした有権者の投票行動を真剣に受け止め、来る参院選までに選挙対策を抜本的に見直すべきである。
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