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2021-11-08 00:00
現代中国の盲点九論:「最近の習近平体制の明暗」再論
松本 修
国際問題評論家(元防衛省情報本部分析官)
11月8日付の新華社記事によると、中国共産党第19期中央委員会第6回全体会議(第19期6中総会、以下「6中総会」と記述)が同日午前に北京で開幕した。習近平中央委員会総書記は、中央政治局を代表して活動報告を行うとともに、「党の百年奮闘した重大成果と歴史的経験に関する中国共産党中央の決議(討論稿)」(以下「決議稿」と記述)について説明を行ったという。この報道に接して真っ先に思ったのが「この1年間の活動報告実施は定例として、習近平はトップ自ら決議稿の説明を行ったのか」ということであった。すなわち習総書記のブレーンで「スピーチライター」に位置付けられる王コ寧中央書記処書記(筆頭書記で政治局常務委員序列ナンバー5)、あるいは今回の決議稿起草責任者とみられる黄坤明宣伝部長(書記処書記兼務)に何故、説明を託さなかったのかという疑問が湧いたのである。他方、多くの邦字紙やネット記事が「決議稿は、6中総会最終日の11日に採択され、習近平体制の一層の強化が図られる」と主張する根拠は一体何であろうか。以下細部みていこう。
小生は以前、今回の決議稿は「果たして党内外の議論は十分に尽くされたのか、まだ議論が足らず採択は来年の7中総会までずれ込む可能性もある」(10月19日付拙稿)と指摘した。10月19日付の韓国「中央日報」も香港紙「明報」を引用しながら、「中国共産党が毛沢東と鄧小平の時代に2回の歴史決議を通過させたからと今回も『第3の歴史決議』と呼べるか」とし、「今年の決議は『最初の歴史経験決議』と呼ばなければならない。中国共産党が初めて党創設以来の成果と経験を全面的に総決算する文献のため」と強調し、決議稿が結局「共産党100年の歴史の成果と長所だけを羅列する自画自賛にとどまる見通し」と主張したのである。さらに、中央日報は決議稿の採択手続きにも注目し40年前、「十年の災厄」とされる文化大革命を否定した1981年6月の歴史決議草案が、前年の1980年10月に党内理論家によって起草された後に「4000人大討論」(中央・地方の党幹部、軍高級幹部、中央党学校学生を大量に動員して行われた討論会)にかけられて漸く採択されたことを明らかにしたのである。このようにみてくると、過去2回の歴史決議と今回の決議稿は内容も手続きも全く異なるものと言え、11日閉幕時に採択される6中総会コミュニケの内容が注目される。
そして、最近の習近平体制は①来年2月の北京冬季五輪開催まで100日をきった時点で、国内各地で再燃した新型コロナ対策は万全なのか、そもそも習総書記は何故陣頭指揮に立たないのか②ボトルネックとされる国内の人口問題・エネルギー問題や、世界経済動向・気候変動問題に影響を受けつつある中国経済に打開策はあるのか、③10月の米中外交トップ会談(スイス・チューリヒ)で合意した米中首脳会談は、何故今もって行われないのかと内外で問題が山積しているようにみえる。ところが6中総会を前に、新華社が配信する記事は「人民至上とは何か、それはこんなに多くの人間が一人の病人を囲んで活動するという一切の代価を惜しまないことだ」(習近平の新型コロナ対策評論 11月4日付)や「習近平が率いる百年大党の奮闘前進という新長征」(習近平の9年間治世回顧 同6日付)といった“提灯持ちの記事”ばかりである。こんな「ぬるま湯体質」の環境下、習近平体制が強化されるか否かを判定するには当面、慎重かつ詳細な観察が必要であろう。
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