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2021-11-06 00:00
(連載2)新聞・テレビの衆院選議席予測を採点する
中村 仁
元全国紙記者
今回は、全国289の小選挙区のうち、野党共闘で候補を一本化したのは213でした。「4割で野党と接戦」(日経)という情勢分析でしたから、予想が難しかったのでしょう。接戦ならば、比例選の当落を決める惜敗率がなかなか定まらなかった。主要紙の朝刊最終版の見出しは、読売が「自民、単独過半数。立民惨敗、維新躍進」で、「単独で絶対多数」に全く触れることができなかった。朝日は「自民伸びず、過半数は維持、岸田首相続投。立民後退」で、この「伸びず」は結果として間違いになりました。
自民が予想外の強さをみせたのは、「新型コロナの感染拡大の勢いが止まった」、「立民と共産の共闘が機能せず、立憲共産党と揶揄された」ためです。近隣に中国や北朝鮮を控え、共産党アレルギーは強かった。それに加え、自民党に際立つ世襲議員の強さでしょう。地盤(先代からの後援会組織)、看板(先代からの知名度)、カバン(政治資金を受け継ぐ資金力)が、政治人材の新規参入の障壁になっています。
新人候補の当選率は「世襲では6割、非世襲では1割」(日経によるデータ分析)と、大差があります。候補者全体では、比例復活を含めた当選率は「世襲では8割、非世襲では3割」と、これも大差です。世襲の新人は当選しやすく、いったん世襲議員になると、落選しにくく、当選回数を増やせる。当選回数が増えると、閣僚や党の要職にありつける。
今回の選挙でも、塩崎元官房長官(愛媛3区)の長男、山口元選挙対策委員長(埼玉10区)の次男、川崎元厚労相(三重2区)の長男が新人で当選しました。選挙事務所、秘書、政治資金をそっくり引き継いだのでしょう。「政治は風」と、よく言われます。その風も、世襲という壁に阻まれると弱まる。政治ジャーナリズムは、舞台裏の情報、動きを軸にした政界新聞から卒業し、データ分析を取り入れた記事を書いていくべきです。(おわり)
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