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2021-11-02 00:00
立憲民主党は共産党との「閣外協力」を解消せよ
加藤 成一
外交評論家(元弁護士)
10月31日の総選挙が終わった。結果は自民党261名、立憲民主党96名、日本共産党10名、日本維新の会41名などである。自民党の261名には驚きである。なぜなら、選挙終盤の世論調査では233議席の単独過半数ぎりぎりの情勢で苦戦とみられていたからである。予想外の善戦と言えよう。また、常に「改革」を訴える日本維新の会の41名も、驚異的躍進である。これに反して、立憲民主党は選挙前の議席110名から14名も減らした。選挙終盤の世論調査では「野党共闘」による一本化の効果で140名前後は可能とされていたから惨敗だ。共産党も選挙前の議席12名から2名を減らした。選挙終盤の世論調査では12名を上回る可能性があるとされていたから、敗北と言えよう。
立憲・共産両党の敗北の原因は「閣外協力」の合意である。総選挙前の9月30日に、両党は、政権交代が起こった場合に共産党が立憲民主党に対して市民連合を介して合意した安保法廃止・立憲主義回復など20項目の「共通政策」を実現するため「閣外協力」すると合意した。しかし、周知のとおり、両党の間には、自衛隊や日米同盟など、日本の存立にかかわる基本的な安全保障政策において重大な相違がある。とりわけ、選挙期間中の北朝鮮による度重なる日本海への弾道ミサイル発射や中ロ両国艦隊による日本近海での共同威嚇行動などが有権者の投票行動に与えた影響は少なからずあるのではないか。東アジアの厳しい安全保障環境を目の当たりにした国民の中には、両党の「閣外協力」に対し不安を感じ投票先を変えた者もいると考えられるのである。
のみならず、共産党は、立憲民主党との「閣外協力」を、過渡期の政権である「民主連合政府」さらに「社会主義・共産主義政権」実現のための統一戦線戦略(党綱領四、五参照)と認識しているから、共産党にとって、「閣外協力」は社会主義・共産主義政権への第一歩である(10月4日付東アジア共同体評議会e-論壇「百家争鳴」掲載拙稿
「閣外協力は社会主義政権への第一歩」
参照。)。このような、「閣外協力」による立憲・共産両党の実態上の「容共政権」の可能性に国民が不安と恐怖感を持ったのではないか。さらに、共産党一党独裁政権の中国による香港・ウイグルへの重大な人権侵害などに対する国民の不安と恐怖心も無視できないであろう。そのうえ、日本国民の間には今も「共産党アレルギー」が根強い。今回の共産党との「閣外協力」により、無党派中間層の票が立憲民主党から離れ、日本維新の会に流れた可能性がある。
今回の総選挙で、有権者が立憲と共産の「閣外協力」を拒否したことは明らかである。その意味で「閣外協力」は大失敗であった。したがって、「閣外協力」を解消しない限り、今後も立憲は政権を獲得できないであろう。当初から最大の支持母体である連合も「閣外協力」に強く反対しているが、連合の態度は国民一般の感情に近かったということであろう。立憲民主党は政権を獲得したければ、直ちに共産党との「閣外協力」の合意を解消し、基本政策を共有できる他の野党との連携・協力を強めるべきである。
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