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2021-10-27 00:00
(連載2)財政に対し独立した監視機関の設立を
中村 仁
元全国紙記者
経済成長率が名目2%ならば、29年度には達成できるとのシナリオは示しています。最近10年間の平均値は1%ですから、信頼できる数字ではない。鈴木財務相は就任時に「2025年の目標に向け、しっかり取り組んでいく。財政出動と財政規律の両立は可能だ」と、述べています。口先だけです。岸田首相は数十兆円の経済対策を選挙公約にしました。財源は赤字国債でしょう。1%に満たない構造的な低成長率のもとでは、数十兆円の財政出動と財政規律(25年度の黒字化)が両立できるはずはない。
日本には会計検査院があります。これは予算の不正支出、ムダ使いなどをチェックする機関であり、財政政策全体についての発言権はありません。財政拡大策と超金融緩和が一体となったアベノミクスについて、検証しないまま、新政権が発足しました。日本の政治は事後検証を回避し、計画が行き詰まると、新しいスローガンを持ち出し、国民の目をそらす。政府、政党から独立した財政監視機関を設け、政策の事後検証、政策目標の実現可能性、妥当性を吟味する。そうしたことをやってこなかった。それが先進国で最悪の財政状態を招いてしまった一因です。
拡大的な財政運営を提唱する現代貨幣理論(MMT)の致命的な弱点は、財政は「政治経済学」であるのに、もっぱら「経済学」的な視点から論じていることです。「経済学」、あるいは財政理論の視点からみて、財政拡大策を修正する段階にきたと判断しても、「政治学」(政治力学)がそれを許さない。財政にブレーキがかからず、国債残高のGDP比は上昇する一方です。
岸田首相の「新しい資本主義」もネーミング先行で、大きくでました。中身が具体的ではありません。リーマン危機に次ぐコロナ危機の追い打ちで、世界の債務総額(政府、民間、家計の借り入れ総額)が史上最大の296兆㌦に膨張しています。マネー資本主義の持続可能性が問われています。「新しい資本主義」を唱えるならば、もっと掘下げた問題提起が必要です。(おわり)
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