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2007-08-15 00:00
小さな国の小さな学会―日本ニュージーランド学会の挑戦―
佐島直子
専修大学教授
来る8月31日(金)に、ニュージーランドの最大の都市オークランドにおいて、日本ニュージーランド学会とオークランド大学アジア研究所の共催による合同研究会が実施される。第三回となる同研究会は、過去二回同様、今回も在オークランド総領事館のご支援を得、日本からも多数の学会員が参加予定である。日本ニュージーランド学会は、1933年に創設された会員百三十名ほどの小ぶりの学会である。いわば、「小さな国の小さな学会」であるが、初代会長の小松隆二慶応大学教授(当時、現東北公益文科大学学長)をはじめとする強力な創設メンバーの尽力で、年4~5回の研究会や年次大会を継続するとともに、学会誌以外にも『ニュージーランド入門』といった啓蒙書の出版を行うなど活発な活動を行っている。昨今の学会費の高騰に抗して、年会費4千円を維持しており、自ずとボランティア精神に富んだ会員の自己犠牲の精神がその運営を支えている。筆者も微力ながら長年、理事の末席を汚しており、2001年~2006年の間は副会長をさせていただいた。残念ながら、学会の中核だった前事務局長の平松紘青山学院大学教授が二年前に急逝され、一時はその前途が危ぶまれたが、現事務局長の山岡道男早稲田大学大学院教授の獅子奮迅のお働きによって、なんとか体制を建て直して現在に至っている。ニュージーランドとの合同研究会は平松前事務局長の御遺志ともいうべきプロジェクトである。
言うまでもないことだが、日本とニュージーランドの二国間関係は極めて緊密かつ良好である。経済関係も、ニュージーランドから日本への輸入額が2766億円、日本からニュージーランドへの輸出額が2699億円(2005年)とほぼ拮抗、安定している。人的交流も盛んである。両国間の姉妹都市関係数は実に42(2006年8月末現在)に上る。ニュージーランドにおける日本語学習者が約4万人(人口400万人)で、日本語は仏語に次いで学習者が多い外国語である。ニュージーランドの大学と提携関係にある日本の大学も多く、ニュージーランドにおける日本人留学生数は1万3417人(2005年3月。前年度比13.3%増)と、中国の留学生数を抜き1位となっている。最近では、テロの危険やヴィザ発給の煩雑さから米国留学が敬遠される傾向にあり、ニュージーランドが代替的な留学先として選択される事例も増えている。
ところが、日本人留学生も大半が短期の語学留学生であり、ニュージーランドで学びながらもニュージーランドについて学ぶ機会が少ない。90年代には、ニュージーランドの行財政改革がもてはやされ、日本のモデル・ケースにしようと国や地方の関係者がこぞってニュージーランドを訪問したのも記憶に新しいが、ブームが去って、ニュージーランドそのものへの関心も減じたようにみえる。また、昨今の日豪の安全保障関係の深化の影に隠れてか、日本とニュージーランドとの政治的な連携も、豪州に比べ相対的に目立たないものとなっているようだ。
日本ニュージーランド学会は、ニュージーランド訪問者、留学予定者の事前学習用テキストとして昨年、『ニュージーランドに行こう』を刊行するなど、ニュージーランドへの知的関心を高めてもらう具体的な努力を継続しているが、二国間交流の基盤となる学術交流の不十分さは否めない。そこで現在、日本ニュージーランド学会では、知的交流の日本側における母体となるべく、新たなプロジェクトを始動中である。企画中のことゆえ、詳しく説明できないのがもどかしいが、「小さな国の小さな学会の大きな挑戦」が始まろうとしている。請う、御期待!
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