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2021-10-26 00:00
(連載1)財政に対し独立した監視機関の設立を
中村 仁
元全国紙記者
岸田新政権が衆院を解散し選挙戦が始まりました。与野党そろって巨額の財政出動を選挙公約に掲げ、選挙戦を戦います。日本の財政はすでに、制御不能の状態に陥っているのに、無責任な話です。野党は与党の放漫財政策を牽制するどころか、消費税率の引き下げ(立民、共産、維新、国民)、一律10万円の給付金など、与党並みかそれ以上の大盤振る舞いです。経済的計算は全くしていない。
矢野財務次官が「日本はタイタニック号のように、氷山に向かって突進しているようなものだ。このままでは、日本は沈没する」との警告を雑誌に寄稿しました。その通りです。どうも日本の財政金融を破綻状態に追い込み、1000兆円を超える国債をチャラにするつもりではないのかと、疑いたくなる。国債がチャラになれば、多くの銀行も破綻し、銀行の預金者も被害者になります。野党は与党にけしかけて、与党の手で日本を破綻させる。そうすれば、政権が野党に回ってくるとでも、思っているのでしょうか。それほどひどい。
財政状態が政治主導で悪化するのをみて、1990年代から主要国は危機感を強め、「独立財政機関」を設置してきました。政府、政党から距離を置き、中立的な立場から国の財政運営について提言しています。主要経済国で構成するOECDでは、ほとんどの国が「独立財政機関」を設けています。米国は議会予算局、英国は予算責任局(2010)、ドイツは安定化会議(同)、豪は議会予算局(2012)です。日本にはありません。
OECD36か国中、29か国に監視機関があり、このうち21か国は、08年のリーマン国際金融危機の後に設置されました。経済危機対策ばかりでなく、高齢化による社会保障費の増大で、財政のタガが緩んできたためです。日本では、財政再建目標があり、「基礎的財政収支を25年までに黒字化する」ことになっています。達成は絶望的なのに、その旗を降ろしていません。監視機関も存在しないので、甘い目標でも責任を問われない。(つづく)
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