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2021-10-13 00:00
(連載2)自由貿易主義とグローバリズム
倉西 雅子
政治学者
その一方で、’サービス’、’投資(マネー)’、’人(労働力)’に関する非関税障壁の撤廃につきましては、別の作用が強く働くように思えます。何故ならば、これらは’モノ’ではなく、意思決定能力を有する主体の自由移動ですので、海外企業、海外資本、並びに、外国人労働者などが、国境という障壁なく国内に流入し、内部化されることとなるからです。
この場合、市場の競争メカニズムにあっては、規模の経済が優位に働きますので、国内に競争力を有する企業が存在しない場合には、米中等のIT大手をはじめとしたグローバル大企業が国内市場にあって有利なポジションを占めることでしょう。その決定権は、もちろん、日本市場を含むグローバル市場で事業を展開している海外企業側にあります。
投資につきましても、自国企業への融資のみならず、株式保有等を介して自国企業の経営にも影響を与えます。海外投資ファンドが、キャピタルゲインの獲得を目的に自国企業を買収したり、国内不動産を買い漁ったりするケースもあり得ます。加えて、海外労働力の移入は、グローバル企業を含む国内の雇用主と海外被雇用者との契約に基づきますので、他の国民の意思は考慮されないのです。
サービス、資本(マネー)、人(労働者)などの自由移動を前提としたグローバル化とは、国境を隔てた主体間のモノの’交換’の論理ではなく、全世界を対象に利益の最大化と拠点の最適化を目指すグローバル戦略の論理によって説明されます。そして、この国家レベルの市場開放による多様な要素の流動化は、グローバルレベルでの意思決定が国内に及ぶことを意味しており、それは、その国の政府や国民の合意を最早要さないのです。国家にとりまして、同状態は、経済力による’現代の「植民地」化’、あるいは、経済的な’従属’のリスクともなり得ましょう。今日、自由貿易主義とグローバリズムの違いを明確化することは、同時に、グローバリズムのリスクの認識をも明確化する上で意味があるのではないかと思うのです。(おわり)
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