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2021-10-05 00:00
チャイナリスク増大はこれから本格的に
大井 幸子
国際金融アナリスト
ご存知のように、恒大集団のニュースが世界中を混乱させています。欧米では2017年頃から中国不動産バブルへの警戒を促すリポートが出ていました。私も以前からこの種の中国発リスクについて報じてきました。ブルームバーグ記事では恒大集団を「火薬樽 powder keg」と称し、まだまだ前途多難な状況は続くと予想しています。9月23日の利払いから続くデフォルトの危機は今のところ避けられていますが、資産の切り崩しや傘下企業の売却などを強いられ今後も苦境が続くものと見られています。これまでの当局の対応からはまず国内の不安を沈めることを優先させる態度が見えてきます。
また、恒大集団は、債券保有者への利払いのために現金をかき集めています。そのため、傘下にあるEV事業会社の社員への支払い、工場への納入業者、サプライヤーへの支払いを止めていると伝えられます。対面を保つために、従業員の給与を払わずに、労働者の生活を台無しにしています。共産党とは労働者(プロレタリア)のための政権だったはずなのに、これでは、労働者を犠牲にして資本家への支払いを優先していることになります。中国共産党の正当性そのものの崩壊であると、私は見ています。
一般に破綻懸念のある企業に対しては、金融面で、債務整理や再建計画によるターンアラウンド(企業再生)が行われます。しかし、私のヘッジファンド・ニュースレターではお伝えしたように、恒大集団はその会社組織が複雑な上、政治的な利害関係と大量の簿外債務を抱え、まともな債務整理は無理だと思います。しかも、米国の破産法に則った、透明性のある法的な対処が法廷で実施されるとは思えません。おそらく、当局は恒大集団の資産を差し押さえ、解体し、恣意的にかつ、密やかに、一部の債権者に優先的な支払いを行い、140万人と言われる住宅購入者に対しては、実物で返済することになるかと想像します。高利回りの投資商品を購入した個人投資家への返済は、ほとんど出来ないかもしれません。なぜかというと、中国当局は、「未完成の建物を早く完成させろ、投資家には金を返せ」と言うだけで、恒大集団に公的資金を注入するとは一切言っていません。
中国の不動産市場は60兆ドル(6,600兆円)の規模と推定されています。日本は不動産バブル破綻で100兆円失ったと言われましたが、中国の場合は日本の10倍以上のインパクトになるでしょう。さらに、中国リスクは金融面にとどまらず、軍事、安全保障面でも脅威となっています。22日に、台湾政府がTPP(環太平洋パートナーシップ協定)へ加入申請し、中国が「一つの中国」の原則に反すると、猛烈に反対しています。その日以来、中国の外交の正当性に真っ向から挑戦する台湾に対して、23日に24機もの中国軍機が台湾の防空識別圏に侵入したのを皮切りに、中国の軍事的挑発は続き、昨日4日には56機もの中国機が侵入し牽制しています。今後は、金融と軍事面でシンクロナイズする中国リスク、これからも続きます。
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