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2021-09-30 00:00
(連載1)豪が原潜導入、日本も検討すべきだ
加藤 成一
外交評論家(元弁護士)
米国は、9月15日、米英豪3か国の安全保障の枠組み「AUKUS」に基づき、英国と連携して豪州へ原子力潜水艦の技術移転をすると発表した。これにより豪州は現行のディーゼル型潜水艦6隻に代わり、新たに原子力潜水艦8隻を導入することになる。原潜は、ディーゼル型潜水艦に比べ、艦内の喚気のため海面に浮上する必要がなく、数か月に及ぶ長距離潜航が可能である。また、ディーゼル型より早く航行でき、広範な海域で活動が可能になる。
豪州政府の、仏国とのディーゼル型潜水艦12隻の建造契約を破棄してまで原潜導入を目指す判断からは、中国の海洋進出への強い警戒がうかがえる。中国は南シナ海の軍事拠点化のみならず、豪州が自らの裏庭と認識してきたソロモン諸島など南太平洋への進出を強めているからである。米英にとっても、豪州の原潜導入は、南シナ海などにおける対中国の「航行の自由作戦」を補強し、対中抑止力を強化するものとして画期的であり、歓迎すべきことである。日本政府もこれを歓迎している。
米国のフロノイ元国防次官は昨年10月米国の外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」において、「米国が72時間以内に南シナ海のすべての中国軍艦、潜水艦、商船を沈没させると信じさせる脅威を与える力があれば、中国の指導者は台湾に対する封鎖や侵攻を始める前に再考するだろう」と主張した。豪州がこの海域で原子力潜水艦を展開すれば、この主張はより説得力を持つようになる。とりわけ、原子力潜水艦は、後記の通り、軍事的に見て相手国の空母や艦船にとって深刻な脅威だからである。
今回の米英による豪への技術移転に対して、海洋進出を強める中国政府は衝撃を受け、早速「核の輸出だ」などと強く反発している。米国防総省発表2020年報告書によれば、中国は潜水艦を60隻保有し、うち少なくとも10隻が攻撃型原潜である。海洋進出を強める中国は今後も攻撃型原潜の飛躍的増強を図るであろう。ちなみに、米国は原潜を68隻保有し、うち19隻が攻撃型原潜である。英国は原潜6隻、仏国は原潜10隻である。日本は潜水艦21隻を保有するが、すべてディーゼル型であり、韓国も18隻のディーゼル型を保有している。中国政府は、今回の豪の原潜取得が、中国による南シナ海における人工島建設、軍事基地化など、フィリピンとの常設仲裁裁判所判決に違反し、南シナ海や東シナ海をはじめとする国際法無視の強引な海洋進出や海洋覇権に対するリアクションであることを認識すべきである。(つづく)
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