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2021-09-09 00:00
半導体生産体制について
真田 幸光
大学教員
半導体受託生産(ファウンドリー)の世界第1位である、台湾の台湾積体電路製造TSMCの生産体制の充実に向けた歩みが勢いを増しているとの見方が強まっています。もともと、大量生産大量販売型の相対的付加価値のさほど高くなかったメモリー半導体などの分野については、コスト削減を図り、損益分岐点を早く越して、収益性を高めるべく、中国本土などの台湾国外にも生産拠点を作り、発展してきたTSMCではありますが、相対的に付加価値が高く、論理展開を行うシステム半導体などのより電脳性の高い、より相対的な付加価値の高い分野については、「意識的に台湾国内のみに生産拠点を残し、その重要性を守る。」という経営戦略を持つ、TSMCが、台湾国内が今年、厳しい水不足に襲われ、台湾国内での生産が危惧されたことに加えて、「米国・バイデン政権のサプライ・チェーン充実戦略による米国本土進出を促され、中国本土とのパワーゲームを意識する台湾政府の意向」なども加わり、いち早く、付加価値の高い分野も台湾国外となる米国進出を決断、更に、日本企業との研究開発などを目的とした展開を促進する上からの日本進出も決定され、上述したように、「世界的な生産体制充実への動き」を強めているように思われます。
そして、このTSMCの追撃に出ているのが同世界第2位の三星電子であると言われています。ところが、三星電子は操業ファミリーの総帥が逮捕収監され、組織決定の遅れが指摘される中、積極的投資にも相対的な停滞が見られるようになり、上述したようにTSMCが相次いで果敢な投資を決定する中、その投資のギャップが広がっているとの声も出てきているのであります。
こうした結果、「メモリー半導体に続き、システム半導体でも世界第1位にのし上がる」という三星電子の目標達成には現状、大きな困難がのしかかっているとも見られているのであります。先の米韓首脳会談を受けて、米国への新たな進出を改めて決定し、TSMCへの追撃を図ろうとする三星電子ではありますが、韓国の半導体業界では、「三星電子が米国に170億米ドル規模の鋳造工場の建設を推進中ではあるが、同地域のインセンティブの詳細交渉が遅々として進まず、最近着工に入った平沢キャンパス3ライン(P3)のファウンドリ生産体制への悪影響も出てくるのではないか。」との声も出てきています。
TSMCと三星電子のこうした競争が見られる中、日本の半導体業界も米国の戦略を上手に利用して、もとからある半導体生産技術の高さを改めて生かし、米国との連携を一つの担保に置きながら、TSMCとの連携強化も必要に応じて図りつつ、再生を意識的に図っていくべきであると私は考えています。その為にも、企業統治では揺れてきていた東芝グループのキオクシアなどを軸に日本の半導体業界の反攻を期待したいものであります。
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