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2007-08-09 00:00
農業市場開放の為には先ず地方の活性化
河合正男
白鴎大学客員教授
都内で開かれたASEAN設立40周年を記念する国際シンポジウムに参加した。中国、インドの台頭の中で日本とASEANの経済関係をどのように緊密化して行くかに大きな関心を払いつつ、素晴らしい議論が行われた。
その中で、パネリストの一人である早稲田大学の浦田秀次郎教授は、ASEANとのEPA(経済連携協定)を早く結ぶべきだ、と述べていた。私も同意見である。ただ、浦田教授がEPAを結ぶ為には、ASEANのために日本の農業市場を開放してやるべきであり、それにより仕事を失う農業者には補助金を出してやればよい、と発言しておられたのが気になった。このような意見は対外経済交渉担当者が従来から発言して来ているものであり、特に新しい考え方ではなく、FTAやEPAを結ぶ為には、先ず我が国の市場、特に農業市場を開放すべきだ、との考えは全く理屈に合致したものだとも見られる。
それにも拘らず、私は日本の農業問題は今や改めて総合的な政治の光を当てて検討し直されるべきだと考えている。その理由は二つの新たな状況変化である。一つは、エネルギー資源及び食糧の高騰であり、もう一つは日本の内政の行き詰まりである。中国等の途上国におけるエネルギー需要の拡大等の影響により世界の食糧価格も上昇しつつある。国内農業を今後どのように維持して行くのか、さらにはどのようにして食料を安全に確保していくのかが改めて総合的に検討されなければならない時期に来ている。それ以上に、光が当てられなければならないのは、農業地帯である地方の経済的疲弊の問題である。
今度の参議院議員選挙の結果が、これを如実に示している。長い間に亘って自民党の支持基盤であった農業地帯を抱える地方が、地殻変動のように民主党支持に動いた。これは、年金や政治と金の問題だけでなく、自民党の大規模農業支援政策に多くの農業者が不安を抱き始めた、という政策的な行き詰まり現象でもあると見られている。また、日本の農業問題は民主党のように全ての農業者に補助金を出せば解決するということでもない。単に、弱小農業者の切り捨て、地方の切り捨てとの政策であれば、農業市場の開放について地方の支持は得られないし、日本の内政も外交も行き詰まってしまう。ASEANとのEPAを結ぶ上で必要なわが国農業市場の開放の為にも、わが国における地方活性化策が早期に実施されるべきである。そのためには一部の農業補助政策だけではなく、地方への税源移譲、企業誘致、さらには教育の向上を含めた総合的な施策が必要である。
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