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2021-07-21 00:00
(連載2)朝鮮半島情勢、嵐の前の静けさか
岡本 裕明
海外事業経営者
しかし、北朝鮮にとって来年の韓国大統領選挙の行方次第では大幅な政策転換を図らねばならないことになるかもしれません。韓国大統領選の投開票日は3月9日で就任が5月10日となります。文大統領は立候補できないので誰かに交代するわけですが、現時点で与党を中心に候補者乱立状態となっていることから、9月には候補者の一本化をする見込みです。与党候補では人気が高い李在明、李洛淵各氏のほか、前法相の秋美愛、前首相の丁世均各氏となかなかのラインアップですが、人気バロメーターからすると李在明氏の可能性が現時点では高いと思われます。
一方、人気が低迷する現政権に対して鋭い切り口で攻め入るのが尹錫悦・前検察総長で国民人気も高く、日本にとっても現与党に比べればくみしやすい相手とみられています。尹氏は大統領選出馬表明において日本との関係について「未来世代のために実用的に協力すべき」と述べる一方で親日でも嫌日でもない立場をとるとみられています。そこで持ち上がったのが「グランドバーゲン」方式です。これは様々な案件を一つのパッケージディールとするものでその中には慰安婦問題や徴用工問題も内包されます。ただ、日本側がどのようなディールになるにせよ「譲歩した」と思われる内容では全く動かない公算が高くこれはまだ論評できる段階にはないと思います。
むしろ、尹氏の性格は一人で権力を使いながら割と驚きの展開をすることで知られており、読みにくいタイプです。ところが、韓国人は気質として新しいものに飛びつき、それが国民的熱狂を呼ぶことが多いため、私は現与党からの大統領候補は敗北し、保守系が支持する尹氏が有利ではないかとみています。当然ながらその場合、中国と北朝鮮との関係は冷たくなる公算があり、特に経済的に疲弊度が高まる北朝鮮がどのような態度を示すのか、注目されます。
そこまで踏まえると朝鮮半島の今は静かですが、来年は賑やかになるのではないかとみています。また、北朝鮮という国家がまだ持続可能なのか、ほとんどハッキングマネーで成り立っているのではないか、と思われるほど国家の体をなしていない状態です。金総書記が2500万人の国民を支えられるのか、銃よりコメを、であれば国家の崩壊も視野に入れる必要はあるでしょう。その場合、中国がどう出るのか、韓国は同一民族としてどう救済していくのか、というあたりまでケースシナリオを拡大しておいた方がよいのかもしれません。(おわり)
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