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2021-06-27 00:00
(連載2)仮想通貨の暴落と中国の影響
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
中国共産党とすれば、共産主義に「市場経済」という経済システムを持ち込んでしまったために、国の繁栄と引き換えに知恵を働かせる自国民の動向に対する心配事も増えたということになる。その市場経済というやり方になじんだ国民(中国の場合は人民というが)の多くが、中国経済と連結性が高まった海外の市場システムへと資本を持ち出してしまう。当然に海外に移動する資本が多いということは、それだけ国内において流通する貨幣が少なくなるということである。よって、中国の外貨準備高も減ってしまい、中国の国際的な優位性が減じてしまうということにつながる。
これがわかっていれば、今年の全人代で「仮想通貨の取引に対して規制が入る」こととした北京政府側の意図がよくわかる。また、中国のデジタル人民元がもし中国政府が考えるような外貨の流入ではなく、国内資金の海外流出に寄与することが判明してくれば、そこにどのような規制が必要になるのか議論や決定がおこなわれるということに繋がってくることになる。具体的にはデジタル人民元と為替における人民元のリンクをどのようにするのかは重要な論点になるだろう。
まさに、そのような規制によって「仮想通貨に嫌気がさす」という人が出てくる。テスラモーターをめぐる中国の動きをみればわかるが、仮想通貨そのものが、徐々に中国の干渉によって不確実性を深めていると考える人も増えてきている。仮想通貨はあくまでもデジタルで管理されていることから、当然に、金(金塊)のようなそのもので独立に価値があるというものではないため、あくまで仮想通貨には貨幣のような信用が求められるのである。その場合は、市場原理による秩序が仮想通貨取引者たちに安心感を与え、信用を育てるために不可欠だ。なぜならば、仮想通貨の値動きに恣意的に干渉される不安があれば、その不確実性が際限無く意識されてしまうからだ。そのことが、今回の仮想通貨の暴落につながってくるということになるのではないか。
今後、仮想通貨がどれくらい資産として通用するかは、中国がどれくらい「デジタル通貨に対して規制を作るか」ということと、中国の資本家がどれくらい「仮想通貨で抜け穴を確保するか」が影響するであろう。中国では、例えば香港国家治安維持法で海外での行為も処罰対象としていることから、今後仮想通貨規制を厳しくすれば、中国人が海外で取引した内容もすべて処罰対象にする可能性があり、そうすれば仮想通貨市場に与える影響も甚大だ。必ずしもそうなるとはかぎらず、もちろん、中国共産党の幹部が海外資産に仮想通貨を使い続ければ、抜け道として残るのかもしれない。いずれにせよ、「政治によって経済がいかようにも規制される中国」を、仮想通貨取引の主役として混ぜた瞬間に、このような乱高下は予想されてしかるべきことだったのである。(おわり)
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