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2021-06-17 00:00
(連載2)英貴族院で証言した白川前日銀総裁の鋭利な警鐘
中村 仁
元全国紙記者
「日本は金融緩和を30年間(1990~2020)以上も実施している。経済ショックが一時的ならば、金融緩和は効果があっても、長期的、構造的な問題を解決するためには使えない。長期化すればするほど、緩和の効果が小さくなる」。だからずるずると、緩和のワナにはまり抜け出せない。人口動態の変化(少子高齢化)、グローバリゼーション、IT化など多様な構造的な要因でデフレが起きている。これらは解決が困難な課題であるために「マネタリズム、財政拡大政策に過度に依存してしまう。日本が15年早く経験したことを欧米は後追いしている」と。政府と中央銀行の関係を問われると、「協調という言い方で考えるのは的確ではない。二つの機関(政府と日銀)の分業が適切に設計されていることが重要である」と指摘しました。
政治は選挙に勝ちたいという目先の誘惑のために、中央銀行に金融緩和の長期化を強いる。ゼロ金利で苦もなく財政を拡張できる。増税よりも、有権者への負担が見えにくい金融緩和の道を選ぶということです。特に日米では、「協調」といっておけば聞こえがいい言葉を操り、政府と中央銀行の一体化というワナにはまっています。中央銀行のゼロ金利政策によって、「政府は高い金利を払うことなく借り入れを続けられる。ゾンビ企業(死に体企業)も生き続け、低生産性の原因になる」と。
こうした証言を日本の議会で聞きたかった。日本では野党も、政権の揚げ足取りに走り、金融財政の将来を熟慮する姿勢がありません。英貴族院における前日銀総裁の証言を、日本のメディアは報道していないようです。4月20日の公聴会です。英国ではコロナ危機の最中でも、こうした議論を忘れることをしない。日本も学ぶべきでしょう。
日本の経済学者は欧米発の経済理論の引用、借用の競争ばかりしています。日本が先頭に立った超金融緩和と財政膨張、それによる政府債務の巨大化、長期化のワナからどう脱出するか。日本こそ新しい経済理論を考えだしてもらいたいと思います。(おわり)
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