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2007-08-01 00:00
二院制の意義を問う
小笠原高雪
山梨学院大学教授
参議院選挙が与党の大敗に終ったことを受けて、「民主党は対決姿勢をつよめ早期の解散を狙うだろう」とか、「安倍内閣も野党の協力確保に努力せざるを得ないだろう」とかの、さまざまな観測が行なわれている。いずれも当面の観測としては頷けるところが多いが、将来の日本政治を展望してゆく上では、二院制そのものをめぐる再検討も必要なのではなかろうか。
私は必ずしも一院制の支持者ではないが、もしわが国が今後も二院制を存続させてゆくのであれば、以下の三条件が必要であると思う。第一は、選挙制度をはっきり異なるものとすることである。およそ選挙制度に完全なものはありえないから、異なる制度にもとづく第二院を設け、それに補完的な機能を与え、よりよい議会政治を目指すというのであれば話は判る。しかし、現状のわが国のように、小選挙区と比例代表の並立という首尾一貫しない制度に基づく議院を並列させることに一体どういう意味があるのか、私はほとんど理解できない。
第二は、衆議院の優越を一層明確にすることである。議院内閣制は議会の首班指名権と首相の議会解散権のセットが基本であり、わが国の憲法も衆議院の優越を規定している。そうであれば、参議院は衆議院の意思を基本的に受けいれた上で、それに改良を加えることを原則とするべきである。かつては「参議院の政党化」を嘆く議論も存在していた。政党化はおそらく不可避であるとしても、選挙の時期の異なる参議院を権力闘争の手段に用いることが常態化すれば、その先に待っているのは議院内閣制の機能不全だけであろう。
第三は、参議院選挙を「政権選択」から原則的に分離することである。もちろん、これはあくまでも原則論であって、参議院選挙で与党が大敗を喫した場合に首相が政治責任をとって退くことも、例外的にはありうるであろう。しかし、衆議院選挙にくわえて参議院選挙までもが「政権選択」の性格を常に帯びるようでは、首相はあまりに短いインターバルで審判を仰がなくてはならないことになる。それでは「官邸機能の強化」も中途半端に終るであろう。もとより以上の原則論は安倍首相の進退をめぐる議論とは別である。
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