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2021-05-24 00:00
(連載1)五輪中止を唱えない新聞の商業ジャーナリズム
中村 仁
元全国紙記者
民主主義社会に不可欠な言論機関を自認しているメディア、特に新聞の東京五輪に対する論調は優柔不断です。開催国の言論機関であるからこそ五輪中止論を率先して提言すべきなのに逃げています。「無理に開催すれば、ごたごたが続く。開催中止の決断のほうが菅政権にとって大きな政治的功績になる」と、主張したらよい。強行開催より、開催中止のほうがはるかに決断力を要するのですから。
日本の新聞は、米国のワシントンポスト紙、ニューヨーク・タイムズ紙、英ガーディアン紙の中止論を自分たちの紙面で紹介することには熱心です。開催国であるからこそ、海外紙に先駆けて論陣を張るべきなのです。菅政権の危機管理意識の欠如、意思決定の鈍さを日ごろ批判しているのに、自分たちが当事者になると、言論機関としての役割を放棄する。「紙の新聞」の絶好の出番を逃しているのです。その最大の原因は、開催国ということで、国内紙が五輪のオフィシャル・パートナー(読売、朝日、日経、毎日)かオフィシャル・サポーター(産経、北海道)としての契約を結んでいるからです。おカネを払って協賛企業になると、広告企画、広告収入、自社宣伝の面で優遇され、多額のリターンを期待できます。系列のテレビ局も放映権料を払う見返りに、新聞の何倍ものCM収入が利益として入ってくる。
コロナ不況で広告収入が激減していますから、新聞各紙は五輪をなんとしても開催してもらいたい気持ちです。その代償として、商業主義の五輪組織と一体になってしまっており、言論機関としての役割を果たせなくなっている。新聞・テレビは五輪の利害関係者として取り込まれているので、公正、中立な報道ができない。五輪組織から距離を置き、中止論を唱える欧米メディアの論調との対比が際立つことになります。
さて、IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長が、広島で行われる聖火リレー(17日)の際に来日するはずの計画は困難になったようです。橋本JOC会長は「大変な負担をおかけするので難しい」と語りました。緊急事態宣言を延期した日本社会の混乱、大阪の医療崩壊の現場を視察し、右往左往の菅政権を目の当たりにして、五輪開催が難しい状況に追い込まれているか、バッハ氏自身の目で確かめてもらうべきでした。バッハ氏は是非とも来日すべきだったのです。「これでは五輪開催はとても無理だ」と肌身で認識できたに違いない。メディアからそうした指摘があって欲しかったのに、何も言わない。(つづく)
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