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2021-05-19 00:00
「文化大革命」開始55周年をめぐる中国の動向
松本 修
国際問題評論家(元防衛省情報本部分析官)
5月18日付の読売新聞の報道によると、香港紙・星島日報(17日)は中国全土を混乱に陥れた大衆政治運動「文化大革命」(1966~76年)を記念する行事が当局の圧力で中止されたと伝えた。中国建国の父、毛沢東を崇拝する保守派(左派)勢力が計画し、文革開始55年となることを記念して、北京で16日に開く予定だったという。しかし、これだけの報道内容では詳細が分からないので「星島日報ネット」をあたってみたところ、以下のような事象が明らかになった。
55年前の1966年5月16日は、当時の中国共産党(主席:毛沢東)中央政治局拡大会議が「中国共産党中央委員会通知」(いわゆる「五一六通知」)を採択し、「十年の災厄」とされる文化大革命が正式に始まった日であり、本年当日、北京紅博会、毛沢東研究院、北京紅歌会など北京市の左派団体が記念イベントを予定していたが、当局の圧力によって中止となった。また、2日前の5月14日は文化大革命の首謀者の一人であった江青(毛沢東夫人、別名李進)が亡くなって30年経った日であり、ネット上には左派団体が「李進党史地位座談会」という晩餐会を開いた写真が掲載され、ここに存命の李納(毛沢東と江青の娘)が参加した模様である。こうした事象の発生は7月1日の中国共産党創設100周年に関連して中国共産党、国務院(政府)、全国人民代表大会、全国政治協商会議、中国人民解放軍など主要組織が大規模な祝賀キャンペーンを展開している最中、想定外の「副産物」であったが、キャンペーンを主導する習近平ら中国当局は国内の不安定要因の萌芽と見なし、圧力をかけて中止させたのであろう。
他方、こうした事象を報道した18日付の「大紀元ネット」によると、中国当局は来年、文化大革命を再審議してこれまでの議論を是正する可能性が高く、来年の党大会で1981年6月に採択された「建国以来党の若干の歴史問題に関する決議」(いわゆる「歴史決議」で本年は採択40周年)が撤廃されるとの見方もあるという。中国共産党の習近平総書記(国家主席)は「正しい党史観」の確立を倦まず主張しているが、習総書記が昨年打ち出した「新しい発展段階、新しい発展理念、新しい発展構造(中国語:格局)」(いわゆる「三新」理論)の中身を明示し、その定着化を図るには先ず過去の文化大革命、これを否定した改革開放路線、その名で生じた「反革命暴乱」天安門事件、及び毛沢東・鄧小平ら歴代指導者への評価・総括を目指す新たな歴史決議が必要ではないか。4月10日付の拙稿の内容を繰り返すが、「たとえ7月(の中国共産党創設100周年)には間に合わなくても、年内に開催が予定されている第19期中央委員会第6回総会(第19期6中総会)で何らかの言及、新決議策定を打ち出すのか注目される」と付記したい。
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