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2021-05-13 00:00
社会主義的な富の再分配よりも「生産的中間層」創出を
大井 幸子
国際金融アナリスト
バイデン政権は対中国や外交政策に関して、トランプ前政権を踏襲しているようです。しかし、経済の面では、「大きな政府」を掲げ、巨額の財政支出を賄うために、税率を上げ、労働組合を強化し、どちらかといえば社会主義に傾いています。コロナ禍で1929年の大恐慌の頃と同じくらい貧富の格差が拡大したと言われています。株高で、資産家はさらにリッチになり、一方、ロックダウンで職を失った労働者は、家賃を払えず路頭に迷うなど、悲惨な状況です。今、富の社会的再配分のためには、ある程度の社会主義化は必要で、持てる資本家から税金を取り、持たざる労働者層に配分し平等化を促すべきだという意見もあります。
確かに、今は、トップ1%の富裕層が富の40%を支配し、80%の国民は10%しか保有していないと言われるほど、格差が進んでいます。しかしながら、私は社会主義的な富の再分配よりも、「生産的中間層」を創出する方が、経済成長を促すと考えます。中間所得層への減税や企業への減税などトランプ政権の政策で、実際に中間層はオバマ時代から息を吹き返したのです。そうした実績を無視してバイデン政権がすべての労働者を貧困から解放しても、経済の成長はかないません。それは、かつての超大国ソ連の崩壊の過程を見ればよく分かります。スターリン主義の下でソ連経済は1960年代に黄金期を迎えました。労働者には週休二日制、住宅、教育、医療、年金など保証されました。しかし、1988年のペレストロイカで失業者が溢れ、間も無く、ソ連は崩壊しました。ソ連には、優れた科学技術、カネもありました。しかし、社会を構成したのは、共産党員ノーメンクラツーラという特権階級とプロレタリアート、飢餓に苦しむ農民で、お金を目的合理的に運営する人間組織、企業(株式会社)を作り得るような「社会関係」が存在しなかったのです。
まさか、米国がソ連の二の舞になるとは想像もできません。しかし、「大きすぎる政府」は個人の生活やこころの隅々まで介入し、思想の自由や独創性までも消しゴムでゴシゴシ消していきます。スターリン主義では、上からの命令にヘコヘコ従うだけ、独創性や指導性が評価されることはなく、その結果、ソ連の労働者は奴隷根性が身にしみきって働かなくなったと、小室直樹氏が記しています(『ソビエト帝国の復活』1991年)。「大きすぎる政府」から毎月支給されるお金で暮らすようになれば、米国人だってソ連人のようになってしまう。気づいた時にはもう遅い。あるいは、自尊心も誇りも捨てて奴隷になっているのでもはや気づくこともないかもしれません。
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