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2021-05-11 00:00
(連載1)日米共同声明を読む
緒方 林太郎
元衆議院議員
先月16日の
日米共同声明
について色々と論評が出ていますが、ちょっと違った視点から見てみたいと思います。まず、何度か出て来る「再確認」、「改めて」、「引き続き」という表現ですが、これは「これまで通り」を意味する表現です。勿論、首脳間でこれまでの路線を継続する事を確認する意味合いは大きいです。日米安保というのは紙に書いてある事を放っておけば機能するわけではありません。常にアップデートしながら、既存のコミットメントを確認しなくてはなりません。そういう事の重要性は十分に承知しています。
【再確認】
「日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用されることを再確認」
「自由で開かれた南シナ海における強固な共通の利益を再確認」
「北朝鮮の完全な非核化へのコミットメントを再確認」
「拉致問題の即時解決への米国のコミットメントを再確認」
「インド太平洋地域における繁栄を達成し、経済秩序を維持することに対するコミットメントを再確認」
【改めて】
「消え去ることのない日米同盟、普遍的価値及び共通の原則に基づく地域及びグローバルな秩序に対するルールに基づくアプローチ、さらには、これらの目標を共有する全ての人々との協力に改めてコミット」
「核を含むあらゆる種類の米国の能力を用いた日米安全保障条約の下での日本の防衛に対する揺るぎない支持を改めて表明」
「南シナ海における、中国の不法な海洋権益に関する主張及び活動への反対を改めて表明」
「(中国に)直接懸念を伝達していく意図を改めて表明」
【引き続き】
「在日米軍再編に関する現行の取決めを実施することに引き続きコミット」
「普遍的価値及び共通の原則に基づき、引き続き連携」
「皆が希求する、自由で、開かれ、アクセス可能で、多様で、繁栄するインド太平洋を構築するため、かつてなく強固な日米豪印(クアッド)を通じた豪州及びインドを含め、同盟国やパートナーと引き続き協働」
「非市場的及びその他の不公正な貿易慣行に対処するため引き続き協力」
最も注目された「台湾」については、正確に言うと「台湾(あるいは中華民国)」について直接触れた部分はありません。触れられているのは「(中国と台湾の間にある)台湾海峡」です。「日本海」について触れるのと、「日本」について触れるのは意味合いが違うというのはご理解いただけると思います。では、具体的な表現を見ていきます。「日米両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す。」よく読んでください。誰が読んでも当たり前のことしか書いていないのです。これに反対するとすれば、「台湾海峡の平和と安定の重要性がない」と考えるか、「両岸関係の非平和的解決を促す」方だけです。さすがに中国も表向きそんな事は言わないでしょう。しかし、次の文章だったらどうでしょう。「日米両国は、台湾の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す。」これだと全然意味合いが違います。「台湾の平和と安定」と「台湾海峡の平和と安定」では、台湾への肩入れの仕方が違います。そして、アメリカから来た最初の案は前者だったと私は見ています。日本側はそこまでは言えないと判断して、表現を薄めるために対案として「台湾海峡の平和と安定」という、用語としてはかなり無効化されたものを出したのでしょう。
中国はこういう外交文書上の機微を十分に承知しているでしょう。内容としては誰も反対出来ない内容なのですから、中国が怒るとしたら「台湾という名前が出た事」だけです。表向きは激しい反応をしていますが、あれは内政上怖い軍人さん対策の面もあります。ホンネは違う所にあるはずです。(つづく)
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