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2021-04-10 00:00
中国関連「ベタ記事」報道から見えるもの
松本 修
国際問題評論家(元防衛省情報本部分析官)
4月10日付「読売新聞」の報道によると、雲南省の共産党員会は8日、ミャンマーと国境を接する同省瑞麗市トップのキョウ(龍の下に共)雲尊・市党委員会書記を解任したと明らかにした。瑞麗市では3月末以降、新型コロナウイルスの感染者が連日確認され、防疫対策の不備を問われたという。こうした報道に接して、雲南省現地の情勢を「人民ネット」から確認すると、キョウ書記の更迭は事実であり、後任にはテキ玉龍が任命された。なお、キョウ前書記は党内職務・政務から外れて一級調査研究員に降格された。更迭の理由となった「3.29疫病発生事案」以降、雲南省では感染者88人(国内感染84人、海外流入4人)が計上されている(4月9日現在)。他方、この更迭事例が明らかになった同日、雲南省指導部(党委員会書記、省長、政治協商会議主席)は同省第二の都市・曲靖市を訪れており、省都・昆明市に代わる「副都心」建設構想を打ち上げていたが、責任感・使命感・緊迫感に欠けた活動であると言わざるを得ない。
しかし、1月24日付の拙稿で明らかにしたように、首都北京に隣接する河北省では2021年に入り、省都の石家庄を中心に新型コロナウイルスが蔓延して感染者数千人を計上、3月上旬には中国本土の感染者数は9万人台に到達していた。首都から遠く離れた南方に位置する雲南省当局の感覚からすれば北方の感染者数千人に対し、現地数十人の感染者など微々たるものということであろうが、こうした危機意識の麻痺、慢心こそ現在の中国各地方、各階層に流れている真情ではなかろうか。
こうした中、国務院は4月8日、人事異動を明らかにし、丁向陽・副秘書長の免職を行った。一見、何でもない人事異動に見えるが昨年、新型コロナウイルスが猖獗を極めた湖北省武漢市に5月から派遣され、現地の大規模PCR検査を仕切った責任者が丁副秘書長だったのである。北京からは1月末、「女傑」孫春蘭・副総理をトップとする中央指導組が派遣されていたが4月末に撤退し、引き続き丁副秘書長をトップとする、より実務的な調整組が派遣されていたのだ。今回の異動の理由や行く先は明らかでないが、論功行賞からすれば「栄転」が順当であろうが発表はない。また、当の武漢市では昨年2月、トップである馬国強が更迭され(後任は王忠林)本年1月には周先旺市長の交代(同市政協幹部に就任、後任は程用文・元副市長)も行われており、地方と中央で疫病対策に従事していた責任者が異動させられたと言え、今後もこうした人事傾向があるのか注目される。
最後に2月23日付の拙稿「華国鋒生誕100周年座談会が意味するもの」では言及できなかった論点に触れたい。本年7月1日の中国共産党創設100周年に関連して中国の党・政府・軍は現在、大規模な祝賀キャンペーンを行っている。実は、その直前の6月末、中国共産党は「十年の災厄」とされる文化大革命を否定し、毛沢東主席の誤りを認めた「建国以来党の若干の歴史問題に関する決議」(歴史決議、第11期中央委員会第6回総会<第11期6中総会>採択)40周年を迎えるのである。この40年間、鄧小平の後を継いだ江沢民、胡錦涛の両総書記は「歴史決議」に触れず、新たな決議策定にも着手しなかった。しかし、現行の習近平総書記は、党創設100周年を契機に新たな「歴史決議」を準備しているのであろうか。たとえ7月には間に合わなくても、年内に開催が予定されている第19期中央委員会第6回総会(第19期6中総会)で何らかの言及、新決議策定を打ち出すのか注目される。
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