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2021-04-09 00:00
問われる日本国の人道主義と民主主義
倉西 雅子
政治学者
中国による残酷極まりないウイグル人弾圧に対して、アメリカに続き、EU、イギリス、そしてカナダも対中政制裁に踏み出ました。ウイグル弾圧は、トランプ政権下にあって既にジェノサイドと認定されており、自由主義国にあって、この見解は共有されています。その一方で、同問題に対する日本国政府の煮え切らない態度は、日本国民に不安を与えています。日本国政府は、憲法第9条を逆手にとって未だにジェノサイド禁止条約への加盟も渋っており、世界に誇ったはずの’平和国家’の名も名折れの状況にあります。政府の煮え切らない態度は二階俊博自民党幹事長を筆頭とする親中政治家による中国への忖度が主たる背景であることが容易に想像されます。あるいは、ウイグル人の強制労働に関わったとして83のグローバル企業が国際人権NGOヒューマンライツ・ナウから名指して非難されており、その内、12社が日本企業ですので、中国市場に進出している内外企業からの圧力や要請もあるのかもしれません。何れにしましても、日本国政府は、’見て見ぬふり’をしているかのようなのです。
こうした日本国政府の後ろ向きの姿勢とは対照的に、ネット上では、日本国も対中制裁に加わるべきとする声が圧倒的多数を占めています。日本国民の対中感情は世界最低のレベルにあるにありますので(凡そ8割が否定的…)、対中制裁は、今や国民的なコンセンサスと言っても過言ではありません。日本国にあって民主主義が正常に機能していれば、当然に、日本国政府は、国民世論の強力な後押しの下で対中制裁に踏み切るはずなのです。果たして、日本国政府は、国民世論に応えるのでしょうか。この問題は、日本国の人道主義と民主主義の問題でもあります。日本国民の多くは、中国政府によるウイグル人に対する迫害を人の道に反する行為と見なしています。日本国民の一般的な道徳観や倫理観に照らしまして、ウイグル人弾圧は、許されざる行為なのです。それにも拘わらず、自国の政府が同問題を看過しているとなりますと、政府の倫理観は、国民のそれとは著しく乖離していると考えざるを得ません。否、同乖離は、政府よりも国民の方が遥かに高い倫理観と健全な感覚を有していることを意味しますので、その表面化は、国民を不安に陥れることとなりましょう。何故ならば、国民の想像を超えるような反道徳・反倫理的な行動を、日本国政府が採らないとも限らなくなるからです。
自らの利益のために、他者の痛みや苦しみに’見て見ぬふり’をできる人は、他国民のみならず、自国民に対しても同様の感覚で臨むことでしょう。自国民であっても、自らにとりましては’他人’に過ぎないのですから。それどころか、自国民であればこそ、自らの権力を及ぼすことができる’’支配の対象’と見なし、粗末に扱うかもしれません。例えば、中国がウイグル人に対する生殺与奪の権を握り、強制収容所に閉じ込めることができるのも、ウイグルが中国の支配下に置かれているからに他なりません。日本国の内部に中国の影響力が深く浸透してきている現状からしますと、日本国政府そのもののが’中国化’することによって、ウイグル人弾圧は、日本国民にとりまして’明日の我が身’とならないとも限らないのです。政府が推進するワクチン接種プロジェクトに対して警戒感が広がっているのも、国民の多くが政府を疑っているからとも言えましょう。
民主主義とは、本来であれば、こうした政府と国民との乖離から生じる危機を制度的に排除する役割を担っています。政府を構成する機関にある人が国民から選ばれた代表であれば、倫理や道徳面において国民と乖離するはずもありませんし、ましてや国民を弾圧したり、虐待したりするはずもないからです。対中制裁網を形成しているアメリカ、イギリス、EU、並びに、カナダ等の諸国は、二枚舌外交等を展開した負の歴史もありますので、一定の警戒感は必要なのでしょうが、日本国政府は、ウイグル人弾圧の非人道性、並びに、国民のコンセンサスを重視し、即、対中制裁に踏み出すべきなのではないでしょうか。対中制裁は、日本国単独でも行うべきことですし、その決断は、日本国が人道を重んじる民主主義国家であることの証でもあると思うのです。
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