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2021-03-30 00:00
バイデン財政刺激策は格差を拡大させる
大井 幸子
国際金融アナリスト
バイデン政権の200兆円規模の大型刺激策が成立しました。3月終わりの週には、みんなの懐が少し潤っているでしょう。このような政府からの直接の現金給付はトランプ前政権下でも、昨年4月に実施されました。コロナショックとロックダウン直後に支給された現金は、多くの人々の生活を助けたようです。が、実際、現金は米国民にどのように使われたのでしょうか。この点について、バンク・オブ・アメリカがアンケート調査を実施しました。その結果、一律に給付された現金で、所得格差がさらに拡大していることが分かりました。
2020年第3四半期(7-9月)の時点で、所得別に見ると上位20%の流動資産は10.2兆ドル、次の20%は2.3兆ドル、そして下から60%は2.7兆ドルでした。「流動資産」とは、預金やマネーマーケットファンド(MMF)口座にある現金のみを指し、株や債券など証券は含まれません。そして、2020年12月末日の時点で、所得別で上位20%では、コロナショックの後で流動資産が1.5兆ドル増加しました。一方、それ以外の80%をまとめると、0.7兆ドルしか増加していません。さらに、上位1%の超富裕層の現金資産は、下から8割の人々の現金の総額に匹敵します。
なぜか?一般大衆は、2020年に支給された現金で、まず負債を支払い、生活費の残りを貯蓄に回したと見られます。そして、超富裕層は現金をそのまま溜め込んだようで、コロナ前よりも両者の格差は拡大しています。純資産(net worth)の推移を米国全体で見ても、コロナショックを機に、2019年の118.22兆ドルから 111.45兆ドル(2020年第1四半期)に落ち込んだものの、第2四半期には119.59兆ドルに回復し、2020年年末には130.15兆ドルに増加しています。同様に株式や不動産の価値も、コロナ前よりも増加しています。富裕層による株式や不動産の保有率は高いので、当然、一般大衆よりも富裕層の富が増大します。同じようなことが、2021年のバイデン政権下での財政刺激策で繰り返されると予想されます。つまり、上位1%の超富裕層と下から6〜8割の人々との格差が拡大していくと見られます。その一つの要因が、バイデン政権が掲げる労賃(時給15ドル)の引き上げです。企業はIT設備に投資し、低賃金労働者を雇わずに済ませようとしています。年収3万ドル以下の人々はますます定職に就くのが困難になってきています。
バイデン政権によるワクチンとバラマキ刺激策の抱き合わせは、やがては生産的中間層にそのツケを回して重税を課し、GDPの7割を占める広範な個人消費を犠牲にするでしょう。残った大衆はわずかな手元資金で賭博場と化した株式市場になだれ込みます。しかし、その多くはいくつもの調整局面や下落の波に逆らえません。このままいくと、現民主党政権では、バイデン氏の健康問題から、2022年の中間選挙頃にハリス大統領が誕生し、その後、健全な資本主義が壊れているのではないかと、心配しています。
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