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2021-03-24 00:00
(連載2)アフターコロナとゾンビ企業
大井 幸子
国際金融アナリスト
2008年9月のリーマンショック直後から、銀行による貸し剥がしや貸し渋りが起こりました。私の知人は、創業以来33年間ずっと黒字経営してきましたが、リーマンショック直後にメインバンクから貸し剥がしされ、会社更生法適用になりました。創業者でオーナー経営者のその知人は、その後3年かけて会社を立て直しましたが、「33年かけて成功させた会社をたったの3ヶ月でメインバンクに潰された」と今でも悔しそうに話しています。この貸し剥がしの中心人物は銀行の本社常務まで出世しています。実際、メガバンクは自分の身を守るために、黒字経営で回収見込みのある中堅企業から先にどんどん資金回収し、不良債権処理に備えていたのです。当時の亀井金融担当大臣による「中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)」が施行されたのは2009年12月で、知人の会社はこの法案を待たずに同年2月に上場廃止されました。
モラトリアム法は時限立法で当初2011年3月までとされていましたが、13年3月に終了となりました。政府は、企業が破綻した際に貸し倒れ債務の4割を補填するなど銀行に裏からカネを回して、多くの中小企業の返済猶予や信用保証などの救済支援を行いました。その4年近い間に「モラルハザード」が起こりました。本来ならば撤退すべき企業がずるずると借金を抱えたまま生き延びてしまったのです。長く続いたモラトリアム法は、ゾンビ企業を増殖させました。
ゾンビ企業は、「開店営業しているが毎月の利払いがやっと、売上げは増えず、借金を全額返せる見通しはなく、新規投資もできない」という状態にあります。ゼロ金利が続けばなんとか生きていけるものの、新規の設備投資もなく、古い体質のまま内向きでイノベーションは起こらず、生産性もどんどん落ちていきます。当然、賃金は上がらず、全体として低迷したままです。
欧米は、平成の時代に日本経済が辿った凋落の一途を研究してきました。そして、アフターコロナで、FRBはゼロ金利から転換する姿勢を明確にしています。そうしないと、「永遠のゼロ」に縛られた日本のようにモラルハザードとゾンビが跋扈し、本来の成長の芽が潰されていくからです。問題は日本です。今は政府からの給付金や支援で生き延びている企業も、アフターコロナでどのように次の時代を生き抜いていけるのか?コロナ禍ですが、次の時代を見据えて産業構造や企業経営、働き方などすべてを刷新していくチャンスかもしれません。(おわり)
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