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2021-03-03 00:00
日本のエリート大学における男女比率
村上 正樹
国際公務員
どのようなデータに依拠しているのか不明ですが、男女格差については科学的なデータに依拠した議論が必要です。
「学業成績だけを見れば既に女性優位である」という点は日本では明らかに当てはまりません. OECDが毎年集計している国際的な学力テストでは日本は理数分野において15歳時点での男女格差が(男性優位)最も大きい国の一つです。また、日本のトップ大学(東大等の旧帝大、一橋、東工大、早慶)の女性比率は世界や近隣アジア諸国(中韓台星・香港)のエリート大学と比べても圧倒的に低い状況です。例えば、アメリカのアイビーリーグ、英国のオックスブリッジ、中国の北京大学・清華大学等では男女比率はほぼ均衡しています。他方、東大の女性比率は20%未満でこの数字は過去20年間横這いです。旧帝大も軒並み30%を超えることができていません(唯一の例外は大阪外語大を吸収して40%近くまで上昇した大阪大学)。女性が多く進学する早慶ですら40%程度です。
東大も含めて男女の入試合格率は殆ど差がないので、問題なのは、日本では女性がそもそもトップ大学を目指さないことです。これには幾つか理由があると考えられています。まず、OECD諸国でも韓国と並んで突出して大きい男女間の賃金格差です。もし、女性がキャリアにおいて男性と平等ではないと予見するのであれば大きなコスト(時間・努力・塾等の学費)を払って何年間も受験勉強することは割に合いません。そして賃金差が大きい理由は仕事上での差別に加え、結婚後の家事分担の女性負担率が日本は他国と比べて突出して大きい(OECDも含めて様々な実証データがあります)ことがあると思われます。ここで日本で医学部を目指す女性が多い点が注目されます。伝統的にキャリア・賃金での男女差別が大きかった日本では優秀な女性が男性と平等に扱われる数少ないキャリアとして、医者・教師・弁護士等の専門資格分野があった点が挙げられます。桜蔭等のエリート女子校が伝統的に医学部への進学を得意としているのもこれが一因と考えれます。次に、そもそも東大を筆頭としたトップ大学に進むためのルートで男女に大きな偏りがあることです。時間があれば東大・京大等の高校別出身ランキングを見てみて下さい。ランキング上位は中高一貫私立校が軒並み独占しており、その殆どが男子校です。女子校はおろか男女共学ですら少数です。この傾向は近年公立校(特にかつてはエリート輩出機能を果たしていた地方の有力公立校)の劣勢が著しい中で拍車がかかっており、東大の女性比率が過去20年間でむしろ減少傾向にあることがそれを証明しています。英国のオックスブリッジへの進学ルートであったパブリックスクール(ラグビー校等)もかつては男子校でしたが、数十年前からその多くが共学化に舵を切っています。他方、日本で灘、開成、麻布といったエリート男子校において共学化の話が政策議論に上がることすらありません。非常に遅れていると言わざるを得ません。最後に、家庭や社会といったpeer pressureが女子のトップ大学への進学モチベーションを下げている側面があると思われます。個人的な経験で恐縮ですが、筆者がかつて勤務していた機関はほぼ全員がトップ大学卒業者で占められていましたが、典型的な家庭のパターンはお父さんがトップ大学出身のエリート、お母さんが女子大等卒の専業主婦というパターンです。このような家庭のもとに生まれた子供では性別によって明らかに異なる教育を受けている例が散見されました。男の子は中学受験させてトップ大学への進学コースに、女の子はミッション系女子大をルーツに持つ中高一貫の女子校(トップ大学への進学実績は殆どない)に入れるというパターンです。医者のお子さんほどこのパターンが多く、筆者のいた組織の一般職にはお父さん・お兄さん・弟はいずれも医者という方が何人かいましたが、それを聞くたびになぜその方は同じ道を目指さなかったのかと疑問に感じていました。その理由については日本社会にいる方では体感的に理解できると思います。
以上を踏まえると、国際機関的な政策提言は明快です。日本においては女性のトップ大学を支援する環境整備に力を入れ、入試においては女性を優遇するようなクオータ制や一定のポイント付与が望ましいということになります。所謂affirmative actionであり、これはアイビーリーグやオックスブリッジでも一定程度実施している施策になります。他方、日本では大学入試は公平であるという神話が根強い(上記の通りそもそも受験の前の段階で大きな男女差別・地域差別・収入差別があるのですが日本ではトップ大学に入れた人は学力が高いという短絡的な見方が主流)ため、中々このような議論が受け入れない土壌にあります。そんな中、唯一の光明は最近非常に少ないながら東大・京大等でも実施されているAO入試です。AO入試は統計上女性の受験比率が高く(そして上記の通り一般入試と同様に男女の合格率に統計上有意の差はない)、女性比率向上に繋がります。
トップ大学の男女比率については、日本が欧米だけではなく、アジア諸国と比べてもいかに世界的な外れ値であるか、という点はもう少し国民的関心を持って良い問題だと思います。そして可能な限り私見ではなくデータで議論する癖をつけたいものです。
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