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2021-02-24 00:00
国家戦略物資としてのワクチン
古閑 比斗志
医師
ワクチンや医療器資材は国家戦略物資である。拙著『ウイルスと外交』では一般のワクチン及び輸入ワクチンに関しては記載した。日本の国内に存在しない疾患に関しては我が国のワクチン会社は前向きではない。我が国の需要が満たされれば良いと考えているのであろう。生産余力はほとんどなく何かしらの原因で生産ラインが止まると国内需要を満たすことが出来なくなる。
諸外国のメーカーは先進国では高く販売し新興国では余剰品を安く販売している。世界の製薬メーカーはグローバル化しており日本の製薬メーカーも以前から合併の嵐にさらされてきた。
我が国がこれらのメーカーを吹き荒れる嵐から守り支える必要はないのであろうか?私は世界的な潮流から外れているかもしれないが日本の安心安全なワクチンが大好きである。日本の安心安全なワクチンが無くならないように守ってあげたいと思う医師は私だけではなかろう。確かに日本国内の感染症の流行状況は非常にコントロールされている。しかし一歩海外に出たらどうであろう。今だに新興国では上下水道等のインフラが追い付かず各種感染症が流行している。アジアで流行している感染症対策はWPROと日本が担うべきである。ワクチンや薬剤に関して、最近は中国の台頭が著しい。日本や欧米先進国の会社が挙って中国に進出しているからである。これらの会社は欧米諸国の基準で生産を行っており輸出が主となっている。
ところが今回のように中国国内で新型コロナウイルス感染症が流行するとどうであろう。日欧米の会社は中国政府のコントロール下におかれ輸出は出来ず製品は中国国内への供与に回されたのである。有事において我が国の需要が満たされなければならない。余ったマスクやワクチンは海外に供与すればよいのではなかろうか。
日本はアジア諸国からの協力を求められる立場である。しかし日本製の安心安全なワクチンは日本国内で消費されているだけで残念ながら輸出されていない。25年前から日本メーカーのワクチン価格は欧米のメーカーが途上国に供与する価格と比較すると非常に高価であり、日本政府はODA資金を供与するが、欧米のメーカー名のワクチンが、ユニセフの名前で供与されているのが現状である。我が国の顔の見える援助が必要であろう。今回の新型コロナウイルス感染症パンデミックを契機に我が国も国家戦略を見直す必要があるのではないだろうか。
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