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2021-01-29 00:00
(連載1)尖閣諸島と‘カーボン・ニュートラル’
倉西 雅子
政治学者
中国による尖閣諸島に対する領有権の主張は、国連により、同諸島近辺の海域における石油や天然ガス埋蔵の可能性が報告されたことに始まります。同国の目的が資源目当てであったことは、日中国交正常化の交渉過程における周恩来氏の発言で確認できるのですが、埋蔵が指摘されている天然資源が石油や天然ガスといった化石燃料の原料である点を考慮しますと、今般、菅首相が表明した2050年までに二酸化炭素の排出量を実質ゼロにするとする目標は、尖閣諸島問題にも影響を及ぼす可能性を秘めています。
二酸化炭素の排出量をゼロとする目標につきましては、習近平国家主席もまた、その達成年を2060年に設定しています。菅政権よりも10年ほど先とはなるものの、かの中国も、カーボン・ニュートラルを国家目標としているのです。アメリカを除き、地球温暖化防止を建前として、ヨーロッパ諸国並びに日中韓もカーボン・ニュートラルで足並みを揃えています。しかしながら、各国とも、実際に‘ゼロ’を達成するかどうかは、怪しいところです。
それでは、中国は、本気で2060年までにカーボン・ニュートラルを実現するつもりなのでしょうか。筆者はそのつもりはないと見ています。そもそも、中国が国際公約を誠実に遵守した事例は乏しく、同国の‘口約束’は反故にされるケースが後を絶ちません。国際的に再生エネが主流となれば、中国からの再生エネ機材や施設の輸出、並びに、中国系エネルギー企業の他国市場への進出を促進できます。また、自由主義国の企業は、環境アクティビストの圧力やESG投資の流れにより、石油開発から手を引きつつあります。よって、中国にとりましては、エネルギー分野でのチャンスの拡大を意味します。
他方、今冬、北京をはじめ中国では大規模停電が発生しており、その原因として、オーストラリアによる石炭の禁輸措置、並びに、三峡ダム等の水力発電能力の低下が挙げられていました。これが示唆するのは、自国自身も石炭産出国ではあるもののエネルギー自給率が低下傾向にあり、国内のエネルギー需要を満たすことができない現状です。この点を考慮して、中国が‘世界の工場’を維持し、かつ、急速に電化が進む14億人の国民生活を支えるための全エネルギーを、2060年までに全て再生エネ、原子力、並びに、水素エネルギーに置き換えることができるでしょうか。すでに省エネ技術が普及している日本にあってさえ困難とされる目標であることを踏まえれば中国のゼロ目標達成は、日本国以上に困難です。(つづく)
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