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2021-01-22 00:00
(連載1)日韓大陸棚南部協定が抱える問題
緒方 林太郎
元衆議院議員
1月11日、日本の海洋調査船が、長崎県沖の日韓中間線の日本側で調査をしていたら、韓国の公船から「当該海域は日韓中間線の韓国側であり、事前承認が無いので退去するよう」求められたとの報道がありました。この件は結構奥が深いです。この報道から分かるのは「日韓中間線の捉え方が、両国間で異なる」ということです。通常、排他的経済水域(EEZ)や大陸棚については、沿岸から200カイリで認められていますが、相対する国の距離が400カイリ未満の際は中間線で分け合うというのが基本ルールです。東シナ海は基本的にこのルールで進めるべき海域です。
では、何故、日韓間で中間線の位置の捉え方が異なっているかというと、少し複雑な事情があります。今回のケースでは、韓国側は済州島を基点とし、日本側は長崎県の肥前鳥島が基点となって中間線を構成しているというのが日本側の理解です。以前は肥前鳥島は、国連海洋法条約上の「島」に当たらないということで、EEZや大陸棚の基点とはしていませんでした(同条約上、島に当たらない「岩」はEEZや大陸棚を有しないという事になっています)。なお、竹島についても同様の取扱いでした。
しかし、韓国が竹島をEEZや大陸棚の基点とするようになったため、日本側も対抗措置として肥前鳥島を「(国連海洋法条約上の)島」として基点とするようになったという経緯があるようです(私自身はこの経緯をよく知らないのですが、政府に入っていた事がある与党議員がそのように言っているのでそうなのでしょう)。
それまでは肥前鳥島よりも東にある男女群島や福江島を基点としていたのですが、肥前鳥島を基点とするようになると、自ずと中間線は韓国側の方に動きます。この旧中間線と新中間線の間の海域で、今回、日本の海洋調査船が調査をしていたのだと思われます。つまり、竹島でそのような主張をするのなら、こちらも別の場所で(EEZや大陸棚に伴う)主権的権利を主張させてもらうというのが、この全体の動きなのだと思います。当該海域で調査をする事自体が戦略的な動きなのです。安倍政権(特に第一次政権と第二次政権の前半)の功績としては、「領土、領海では腹一杯主張する」というのがあったと思います。(つづく)
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