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2021-01-17 00:00
(連載2)韓国「慰安婦」訴訟、控訴すべきだ
加藤 成一
元弁護士
なお、「日韓慰安婦合意」については、韓国内には被害者(慰安婦)らの要求を無視した「被害者中心の解決」ではないから無効であるとの批判がある。本件判決もこの流れであろう。しかし、韓国外交部(外務省)は、2014年4月16日の日韓局長級協議開始決定後、全国の被害者団体、民間専門家などと面会を重ね、2015年の1年だけでも15回以上被害者および関連団体と接触し、被害者らの要望を聴取し、交渉を進める過程でも被害者側に関連内容を説明している(2017年12月27日付「2015年の慰安婦合意に関する韓国政府側の検証委員会(委員長はハンギョレ新聞論説委員長)による報告書」参照)。これらをも踏まえたうえで、交渉の結果、日韓両国間に「日韓慰安婦合意」が成立し、慰安婦問題に関する日本政府の責任、謝罪、賠償の合意に至ったものである。このように、「日韓慰安婦合意」は、日韓両国間で法律上有効に成立した「国際法上の合意」であるから、誠実に順守し履行されるべきは国際法上の大原則である(条約法に関するウイーン条約26条参照)。したがって、本件判決にかかわらず、韓国政府は原告らに対して、日本政府拠出の10億円から賠償額を支給するなど、「日韓慰安婦合意」を誠実に履行する国際法上の責任があることは明らかである。
日本政府は「主権免除」を理由として、本件訴訟の審理には一切応じてこなかったが、結果的には、事実上の「欠席判決」となり、日本外交の失敗であったと言わざるを得ない。なぜなら、「主権免除」以外にも日本政府が主張し反論すべき点は、上記の通り、「日韓慰安婦合意」「慰安婦生活の実態」をはじめ十二分に存在するからである。にもかかわらず、報道によれば、日本政府は現在でも韓国の裁判権に服することになるとの懸念から、控訴せずに国際司法裁判所に提訴する方針のようである。しかし、国際司法裁判所に提訴しても、韓国側が応訴しなければ審理は開始されない。「主権免除」や「日韓慰安婦合意」等の点において明らかに国際法上不利であることを認識し敗訴を恐れる韓国政府が応訴することはあり得ないのである。
本件判決送達後2週間以内に控訴しなければ、本件判決が確定し取り返しがつかなくなる。なぜなら、もし、本件判決が確定すればこれが同種事件の重要判例となり、今後も同種訴訟や植民地時代の損害賠償を求める関連訴訟等が頻発し、日本政府は窮地に追い込まれ、敗訴を重ねる恐れがあるからである。韓国の裁判所・裁判官を含む司法は、時の国民世論の動向や時の政治権力の意向に強く左右される傾向があることは、2018年10月30日の「韓国大法院徴用工判決」を見ても分かる。そうだとしても、日本政府が控訴・上告して上記の「主権免除」や「日韓慰安婦合意」「慰安婦の生活実態」などの点を強く主張して徹底的に争えば、裁判官も代わり、上級審において勝訴の可能性がゼロとは限らず、また、原告との訴訟上の和解成立(上記10億円の余剰金からの支給など)による訴え取り下げの可能性もゼロとは限らない。
このように、日本政府が直ちに控訴・上告すれば、少なくとも今後5年ないし10年間は本件判決は確定しないから、その間、韓国における保守中道政権への政権交代や、それに伴う世論の変化もあり得る。それにより、本件訴訟及び同種訴訟を含む慰安婦問題全体が日韓両国により改めて政治的に解決される可能性もゼロとは限らない(上記10億円の余剰金による原告の元慰安婦らへの支給など)。上記の通り、本件判決は、「主権免除違反」「日韓慰安婦合意違反」という二重の重大な国際法違反の判決である。よって、日本政府には、直ちに控訴して事実上及び法律上の論点につき徹底的に争うべきことを緊急提言する次第である。1月20日付け「韓国ハンギョレ新聞」によれば、本件訴訟の原告12名と延期された同種訴訟の原告20名のうち、かなりの人が日韓慰安婦合意によって作られた財団から1億ウオン(約950万円)を受領しているとのことである。まさに、本件訴訟は日本政府に対して「二重払い」を請求するものであり、これを全面的に認めた本件判決には驚くほかない。(おわり)
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