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2020-12-25 00:00
(連載2)迷走する有識者たちのコロナ論
中村 仁
元全国紙記者
そんな脆弱な医療体制の日本の死者数は欧米よりもはるかに少なく、G7では最小です。政府のコロナ対策がなっていないのに、結果(死者数)が欧米の50分の1、100分の1(例えば100万人当たり)というのは、何が理由なのでしょうか。そこに触れない政府批判は的外れです。同氏は「民間臨調(自ら主宰)が総括した『日本モデル』の虚構と真実」(同12月号)との記事では「安倍首相が胸を張った『日本モデル』(日本式のコロナ対策)は、場当たり的な判断の積み重ねであった。結果オーライにすぎない」と、酷評しています。
民間臨調を名乗りたいなら「政府の場当たり的な対応でも、なぜ犠牲者が低くて済んでいるのか」こそ解明して欲しかった。「日本型モデル」は、キャッチフレーズを好む安倍氏が思い付きで名付けたものすぎません。安倍批判をしたいがための臨調だったのでしょうか。船橋氏が迷走の末にたどりついたのが「東アジアの興隆と西洋の没落」(新年号)です。「日本を含め東アジアの死者数は欧米に比べて、極めて少ない」に、今になってやっと言及するなら、理由を説明すべきです。
東アジアなどで死者が少ない理由について、いくつかの仮説が唱えられています。「BCG接種国説」「自然免疫説」「交差免疫説(類似のウイルスに対しても免疫力を発揮する)」、それと「移動制限、接触制限といった感染抑止策の効き具合」などでしょうか。欧米と日本の被害の開きの謎を解こうとする試みを「ファクターXを探せ」と、ノーベル賞の山中伸弥・京大教授は命名しました。
驚いたことに、岩田健太郎・神戸大教授が「ファクターXの幻想を捨てよ。日本人だけが新型コロナウイルスに感染しにくい、という事実はない」(同新年号)と、真っ向から山中教授を批判しました。「ファクターX」は日本人に限った話ではなく、世界を広く見渡せば、新型コロナの感染拡大・被害が国、地域、民族、人種によって、不思議な格差があり、それ解明してみようという問題提起と考えたい。東アジアばかりでなく、アフリカ、オセアニアも被害は小さい。「ファクターX」が解明されれば、日本を含む東アジアは、欧米並みの防御体制をとる必要はなくなり、経済はそれだけ助かることになります。山中教授に対する「幻想を捨てよ」も、議論が迷走しています。(おわり)
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