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2020-12-16 00:00
(連載1)‘縦割り行政の打破’の懸念材料
倉西 雅子
政治学者
菅政権の打ち出した行政改革の基本方針は、‘縦割り行政の打破’です。政権発足当初、河野太郎・行政改革担当が「行政改革目安箱」を開設したところ、わずか半日で4000通が殺到したことから、国民からも強い支持を受けている印象があります。
管轄権が広範囲の省庁に及ぶ問題領域にあっては、確かに、政策決定に至るまでのプロセスにおいて利害調整や意見の集約に時間がかかりますし、政策の実施後も、各省庁の‘省益’によって効果が薄れてしまうケースもあるかもしれません。迅速さや効率性の向上を最優先とし、極限までこれらを追求するならば、‘縦割り行政の打破’には、それなりの理由がありましょう。システムを並列型から垂直型に転換すれば、円滑かつ効率的な行政が実現しそうに思えます。とりわけ、打破すべき対象が‘既得権益’と表現されますと、国民の多くは、改革支持に傾きがちです。しかしながら、この改革、幾つかの側面で問題が潜んでいそうなのです。
第1の問題点は、現代という時代の複雑性です。‘縦割り行政’が出現した理由は、現実の経済・社会にあっては分野や立場によって様々な意見や利益があり、利害関係も複雑に交差しているからです。‘縦割り’の機構が障害となって行政が現実に適切に対応できないのではなく、その逆に、経済・社会複雑化したからこそ‘縦割り行政’となってしまったのです。となりますと、行政の適応性を高めるための方策は、機構の一本化を図り、垂直型に向けて改革するのではなく、省庁間、あるいは、分野間の意見・利害調整のシステムを精緻化するという方法があるはずです。現実の複雑性への対応という側面からすれば、後者の方が、余程、‘進化’した統治機構の形態でしょう。
第2の問題点は、今日の政府は、民主的な正当性が揺らいでいるという現実です。政府は、民主的選挙を経て成立しているが故に、官僚組織に対して自らの優位性と政策決定の正当性を主張することができます。しかしながら、今日の日本国の政治のシステムは、議院内閣制ですので、首相は事実上与党内の党首選挙で選出されますし、菅首相は総選挙をも経ていません。(つづく)
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