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2020-11-22 00:00
(連載2)RCEPの批准は見送るべきでは
倉西 雅子
政治学者
こうした懸念に対しては、中国市場に進出する日本国のIT企業もまた日本国内にサーバーを置けるのであるから、公平であるとする反論もありましょう。しかしながら、規模において劣位する日本のIT企業が中国IT企業を差し置いてシェアを伸ばせるとは思えず、しかも、サーバーは電力料金の安い国に設置される傾向にありますので、日本国は、サーバーの設置国としての競争力も劣位しています。ここにも、現実としての日中間の不平等が見受けられるのです。
マスメディアの多くは、米中対立の最中にあって孤立化を恐れた中国が大幅に譲歩したとするスタンスですが、報じられる内容を見る限りでは、明らかに中国有利の協定です。例えば、工業製品の分野では、中国は、日本製品の輸入に際して86%の関税を削減するそうですが、同分野におけるRCEP全体91.6%ですので、結局、日本国の方が高い率で中国製品の輸入関税を撤廃することとなるのでないでしょうか。
そもそも、自由貿易圏という広域的な枠組み自体が、大国、並びに、価格競争力を有する側に有利なのですから、その結果は、容易に予測できます。RCEPには、その他もろもろのリスクが潜んでいることでしょう。軍経が一体化した中国の危険性を多くの国民がしるところとなり、かつ、民間レベルにおいてもデカップリングを模索されている折、RCEPを推進しようとする日本国政府は、逆走して言えるようにも見えます。あるいは、リスクを知りながらの‘確信犯’なのでしょうか(国民を騙している?)。
協定が内包するチャイナ・リスクが明らかになったのですから、RCEP協定の批准の是非については、参加各国において議論されることとなりましょう。各国の首脳が署名するとなりますと、その際、批准を決定する権限を有する議会の役割は重大なのですが、日本国の国会は、大丈夫でしょうか。そして、同協定によって直接的な影響を受ける諸々の産業や国民も、積極的に意見や立場を表明すべきなのではないかと思うのです(おわり)
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