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2020-10-31 00:00
中国本土の高度人材獲得作戦について
真田 幸光
大学教員
米国が現在、事実上の制裁対象にしている中国本土のIT企業である華為(ファーウェイ)の成長の最大の要因は、「高度人材の引き抜きにある」と見られており、人材の引き抜きも含めて、「中国本土は知的財産を侵害している」との国際的な認識にもなるのでありましょう。さて、華為の子会社は、「天才少年」と言う名前のプロジェクトで高度高級人材を採用しています。即ち、「天才少年」は毎年全世界から20~30人の卓越した若者を迎え入れるプログラムであり、7段階の複雑なテストで選抜後、通過者をさらに1~3等級に分けられるものであり、古くは、米国のフルブライトの奨学生を集めたものに重なるものもあると私は見ています。そして、昨年はロシアで採用した若い人材には、日本円で2,400万円を超える年俸が支払われたとの観測報道も出ているのであります。
こうした中、米国のオハイオ州の病院で働いていた中国本土系の研究員が連邦捜査局(FBI)に逮捕されると言う事件が起きたことはご高承の通りであります。中国本土政府の「千人計画」に加わっていた事実を明かさず、米国政府の支援金を受け取った疑いで逮捕されたものであります。また、今年初めにはハーバード大でバイオナノ技術を専門としている米国人教授が研究室で緊急逮捕されていますが、この教授も「千人計画」に参加し、研究費と月給を受け取っていた事実を隠し、米国の国防費による機密研究に加わった疑いで緊急逮捕されているのであります。中国本土のこうした「頭脳獲得作戦」が米中覇権争いを更に過激化しているとも言えましょう。
中国共産党は2008年、積極的に海外人材を迎え入れる「千人計画」を発表しました。名称は1,000人ですが、誘致人数は1,000人にとどまらず、2008年以降、千人計画で中国本土に入った科学者だけで7,000人に達すると推定されています。習近平国家主席の指示で2022年までに人材1万人を誘致するとして、その規模は拡大し、中国本土は、技術人材を獲得して、中国本土国内で一貫して必需品のみならず、高度核心部品、高度製造装置、高度新素材などの生産を中国本土国内で確立する、「製造2025」と呼ばれるプロジェクトの達成には、こうした、「世界的な高度人材の囲い込み」は不可欠の戦略となっています。
そしてまた、中国本土で毎年IT産業関連学科の卒業生は100万人に届かないが、不足する技術人材は数百万人に達するという統計もあり、中国本土国内で必要な人員を確保できない為、周辺国に目を向けており、昨年から中国本土の半導体企業2社が台湾最大の半導体メーカーから引き抜いたエンジニア、管理者だけで100人を超えるとの推計値も出ています。2~2.5倍の年俸を受け取ることを前提に、台湾から中国本土に流れた人材は3,000人を超えるとも見られており、人材の引き抜きは米国や日本のみならず、台湾や韓国などにも広がっているようです。
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