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2020-10-16 00:00
日本学術会議と「共産党支配」
加藤 成一
元弁護士
菅首相による日本学術会議会員任命拒否問題であるが、任命拒否の「適法性」については、1983年の「内閣は推薦された会員を拒否しない」との中曽根答弁の誤りが問題の根源である。なぜなら、日本学術会議法7条では「会員は日本学術会議の推薦に基づいて内閣総理大臣が任命する」と規定されているだけで、推薦された会員の任命を拒否できないとまでは規定されていないからである。会員を任命した以上は任命権者である内閣総理大臣に任命責任が発生するから、任命につき内閣総理大臣に一定の裁量権があるのは当然のことである。したがって、今回の任命拒否は法7条に適合しており違法性はない。問題になるとすれば、合理的な理由のない裁量権の乱用以外にはない。
政府は、今回「総合的・俯瞰的観点から任命権を行使した」と主張しているので、任命権の濫用ではないことを可能な限り国会等でさらに具体的に説明をすべきであるが、法7条で、もともと内閣総理大臣には一切裁量権がなく、したがって、任命拒否権も一切ないとする日本共産党など一部野党の主張は、極論であり法律的にも不合理で相当とは言えず、最高裁判所も到底認容しないであろう。上記中曽根答弁が「法解釈上の答弁」なのか、「運用上の答弁」なのかは必ずしも判然としないが、いずれにしても、政府としては、中曽根答弁の法解釈上ないし運用上の誤りを明確にすべきである。
次に、日本学術会議の改革問題であるが、これについては日本学術会議における長年にわたる「共産党支配」の問題を避けては通れない。経済学者の池田信夫氏は、論稿「学術会議は共産党の活動拠点だった」(2020年10月9日付「アゴラ言論」掲載参照)において、戦後、長年にわたって、日本学術会議は共産党系学者・活動家によって乗っ取られ、その象徴が2017年3月の「軍事的安全保障研究に関する声明」による日本学術会議の軍事研究禁止方針である旨を指摘されている。また、徳島文理大学教授の八幡和郎氏も、2020年10月11日付「アゴラ言論」掲載の論稿「学術会議:なぜ共産党が学問の世界で強いのか」において、日本学術会議が、軍事研究禁止のように特定の政治勢力、即ち共産党系の勢力が国策に影響を与えるための道具になっていることの問題点を指摘されている。
筆者は、日本学術会議など日本の学界において共産党が強い理由は、共産党及び共産党系学者が、弁証法的唯物論と史的唯物論の「哲学」、階級闘争暴力革命とプロレタリアート独裁の「政治学」、剰余価値論と資本主義消滅論の「経済学」が三位一体として綜合された体系的な「マルクス主義」で理論武装しているからであると考えている。それに加え、日本の学界では現在でもなお文系理系を問わず、「マルクス主義」の影響力が根強く残っている。以上の二つの要因が、日本学術会議における「共産党支配」を可能とする主な理由である。したがって、上記「マルクス主義」が日本の次世代の研究者たちによって理論的にも実証的にも完全に止揚され克服されない以上は、今後も、日本学術会議における隠然とした「共産党支配」はなくならない。しかしながら、今回の任命拒否問題で政府側が示した会員任命の規準としての、党派性など左右の一方に偏らず、広い視野・観点から公正公平に政策等の提言や評価をする前記の「総合的・俯瞰的観点」が、上記に述べた軍事研究禁止に象徴される日本学術会議の党派性を排除し、公正性・中立性を確保し担保するために有効であるとすれば、今後の日本学術会議改革の第一歩としてこれを評価すべきである。
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