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2020-10-13 00:00
(連載2)メディアこそ質高くあれ
中村 仁
元全国紙記者
中露は米国とは逆に、情報統制社会です。自由な言論活動を封殺して情報統制し、「ウソ」「虚」を繰り返し、「非」を既成事実化する。愚劣です。韓国も頑として「非」を認めない。国際紛争の多くは、少なくとも片方が「虚」を吹聴している「愚劣さの暴走」です。そのような中で、日本は賢明な国なのか。今月1日朝の新聞では「菅首相が衆院の年内解散を見送りか。コロナ対策、経済再生に全力」(読売)という記事が一面のトップでした。世論調査でも「任期満了まで解散不要」60%ですから、菅政権は冷静に判断しているのかとも思いました。
それがどうでしょう。二面には「概算要求105兆円超」「金額未定とする事項要求も多い」とあります。年末に決まる来年度当初予算案は、3年連続で100兆円を超えること確実です。主要国で最悪の財政状態の国が、財政膨張にブレーキをかけようとしない。むしろ財政膨張を選挙対策に使おうとしている。そう考えると、日本でも、財政面での「愚劣さの暴走」は続きます。
では、世界は「愚劣さの暴走」の結果、破滅に向かうのかというと、そうでもない。歓迎すべき事実はいくつもあります。たとえば「極度の貧困(1日1・9㌦未満で生活する人)」はこの25年間で、12億5千万人減ったそうです。悲惨なテロの報道が絶えない一方で、全面戦争が減り、人類史を通じて暴力も確実に減少しているそうです。いずれも進化心理学の第一人者、ピンカー教授(ハーバード大)の主張です。さらに、「近代医療によって、過去2世紀の間に、小児死亡率は33%から5%に低下した。1850年以降、人類が近代医療の恩恵を被るようになった」(歴史学者ノア・ハラリ/サピエンス全史)といいます。
長期的な流れを見れば、「愚劣さの暴走」ばかりではないでしょう。愚劣な大統領選のように派手に報道されないから、識者が指摘するまで気がつかないのです。「ウソが力を持つ時代」では、何を報道するかしないか、メディアの質も試されているということでしょうか。(おわり)
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