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2020-10-07 00:00
(連載2)低金利が招く所得格差拡大
岡本 裕明
海外事業経営者
アメリカには古い格言があります。株式などの投資に充てる金融資産の割合は「100マイナス自分の年齢」の%を仕向けるというものです。例えば30歳なら70%が株式、70歳なら30%が株式とされます。ところが最近の低金利下で100ではなくて110-120にするべきという声があります。とすると30歳なら8-9割を、70歳なら4-5割を投資に充てよ、というわけです。かなり無謀ですね。しかし、仮に収入の絶対額が大きければ生活に必要な家計収入の額(=家計の固定費)の比率が下がってきますので投資に仕向ける余力が増えるのです。ダウ平均を超長期で見ると途中で凸凹はありますが確実に成長しています。一方、日経平均は89年のピークからいまだに4割近く下回るのです。これでは投資に対する姿勢はそもそも違いすぎるというものです。
次になぜ、低金利が所得格差を生みやすいか、です。皆さんに今から100万円貯めてください、というとそんなに簡単にできないというかもしれません。では手持ちの100万円を200万円にしてくださいと言われたらどうでしょう?2倍です。日本で金利収入だけで達成するには数万年ぐらいかかるかもしれません。では1000万円を1100万円にと言われたらたった1割です。1割ぐらい増やすなら株式市場でスキルがある人がその気になればせいぜい1カ月もあれば達成できなくはないレベルです。つまり、株式市場に投入できる元手があるのとないのでは増え方がまるで違うのです。
金持ちがどんどん金持ちになる理由はその多くは事業家であり、自分の会社の株主だったり、金融資産や401Kで株式を大量に持っているケースが多いと思います。それらの増え方は%は同じでも絶対額の増え方が加速度的になることもあります。ここでいう加速度とは複利的運用をするという意味です。例えば上述の1000万円を一か月で1100万円に増やした場合、その増えた100万円を更に運用すれば同じ10%/月でも2カ月目は1210万円になり、10万円余計に増えるのです。それは逆に言うとじっと持っていてもだめでどんどん売買を繰り返していく必要があるともいえます。
低金利とは本来であれば企業の投資を促し、消費者に消費を促すものです。ところが実際には企業の投資には機能していますが、消費者は欲しいものが飽和しているので投資に回りやすくなり、持てる者がどんどん資産を増やす一方、そもそも景気が悪いから金利が低いわけで、資産や収入が少ない人は欲しいものが買えないどころか、仕事にありつくのが精いっぱいということになるのです。その点からすれば世界で続く低金利政策は格差が更に増すのは摂理ともいえるわけで、今後、その開いたギャップが社会の中でどう捉えらえられるかが着目されるところになるでしょう。(おわり)
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