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2020-09-24 00:00
(連載1)菅政権に対する新聞論調を点検する
中村 仁
元全国紙記者
菅新政権が誕生し、デジタル庁新設、携帯電話料金の引き下げ、「縦割り110番」(行政改革目安箱)、不妊治療の保険適用など、総論の提示がないまま、脈絡もなく各論が先に飛びだしています。メディアはこれらを追うのに精一杯で、新政権の基本的な国家観を分析する余裕がありません。政治報道に対して繰り返されてきた批判は「日本の政治ジャーナリズムでは、次第に本来の政治部が姿を消し、政界部に変質してきている」です。政治の基本的なあり方を掘り下げる「政治部」から、目先の政局の動き、人事抗争、裏話を追う「政界部」になっている。その傾向が強まっています。
菅氏が新総裁に決まった時の朝日新聞の「社説余滴」(13日)の見出しは「すがすがしくおめでたい」です。「菅氏」の「すが」に引っかけて嘲笑しているようなコラムです。まるで長めのツイッター投稿です。朝日には、こんな調子の記事が目につくようになりました。「政治技術として、『いじめ』を使うことをいとわない政治家の姿が見え隠れする」「またも言葉を光らせられぬ首相を選ぶ。ピンチの温床をまるごと継承。すがすがしいほどおめでたい」。菅氏にはこうした問題があるにしても、意地の悪い変化球でなく、菅氏に直球を投げてほしかった。読んでいて「この文章は朝日新聞の体質を象徴している」と、感じました。これは政治論ではなく、茶化した総裁批判です。この記者もテレビのワイドショーか、ツイッター社会の影響を受けているのか。読んでいると、気分が悪くなる。こんな政治論説を読んだことはまずなかった。
政権論を扱う社説は、直球を投げるべきです。朝日の一本社説の見出しは「安倍政治の焼き直しは御免だ」(15日)で、「高揚感には程遠い。政治のダイナミズムは感じられない」あたりまではいいでしょう。主要派閥が水面下で菅氏支持を決めてしまい、政策論争は不在、新首相の政策が後から出てくる。順序を間違えており、こんな首相選びをしている国はどこにあるのかといった批判を朝日は強調して欲しかった。
次に「突然の首相辞任を受けたリリーフ登板であったとしても」というくだりがあります。「リリーフ登板」と、簡単に言い切ってはいけません。菅氏は長期政権を目指す意欲が旺盛と私は読みます。時間がかかりそうな案件を矢継ぎ早に指示しています。「消費税は将来的には引き上げざるをえない」(その後、修正)の「将来的」の意味は「自分は長期政権を目指す」という気持ちを込めたはずです。(つづく)
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